◆対象商標:
「FANTINI ファンティーニ」
第33類「果実酒、ワイン」等
◆種別と審判番号:
無効の審決
無効2014-890094
◆審決日:
2016/12/28
◆関連条文:
商標法第4条第1項第19号
商標法第4条第1項第7号
◆引用商標
国際登録第1183715号商標 「FANTINI」
<本商標が上記条文に該当するか結果と理由をみる>
◆結論:
本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
◆理由:
1 引用商標の周知性について
請求人の提出した証拠等から、本件商標の登録出願日及び登録査定日において、引用商標が請求人の業務に係るワインを表すものとして、イタリアを含む外国及び我が国の需要者の間で広く認識されていたものということができない。
2 請求人と被請求人の取引等について
(1)被請求人は、日本国内における、食品関連商品の輸入及びそれに付帯する諸業務を事業概要とし、フランス、イタリア、スペインなどのヨーロッパの主要ワインを中心にワインを輸入している。
(2)被請求人は、請求人から「FANTINI」ワインを直接輸入した。
(3)被請求人は、我が国において、本件商標について、2005年10月7日付けで商標登録出願をし、商標権を取得した。
(4)請求人の商品は、請求人の主張によれば、輸入業者を通じて日本に輸入され、小売業者などに卸され各店舗を通じて、又はインターネット等の通信販売を通じて流通している。
請求人は、「被請求人は、2005年から2007年には請求人から『FANTINI』ワインを輸入したが、それ以降、現在では、被請求人との取引は無い状態であり、被請求人以外の輸入業者を通じて日本で流通している。」と主張している。
(5)被請求人提出の証拠のみからは、被請求人がワインに本件商標を継続して使用しているということができない。
(6)請求人は、イタリアにおいて、商標「FANTINI」について、2002年10月18日に出願し、登録を得たといえる。
また、我が国への出願は、2013年(平成25年)9月24日であり、当該出願について、2014年(平成26年)7月3日付けで、本件商標を引用として拒絶理由が通知された。(2014年(平成26年)12月2日付けで本件審判を請求した。)
(7)請求人は、2015年(平成27年)4月9日ないし同年10月20日の間、被請求人に本件商標の譲渡を申し入れた。
3 本件商標と引用商標との類否及びそれらの指定商品の類否
ⅰ)本件商標
称呼:「ファンティーニ」
観念:特定の観念を生じない。
ⅱ)引用商標
称呼:「ファンティーニ」
観念:特定の観念を生じない。
ⅲ)本件商標と引用商標との類否
外観:「FANTINI」の文字部分を共通にし近似した印象を与える
称呼:共通する
観念:比較することはできない。
上記から、類似する商標というべきである。
ⅳ)指定商品の類否
本件商標の指定商品中「洋酒、果実酒、いちご酒、なし酒、ぶどう酒、ワイン、シャンパーニュ地方産の発泡性ぶどう酒、スパークリングワイン、りんご酒」は、引用商標の指定商品「ワイン」と同一又は類似する商品である。
4 商標法第4条第1項第19号該当性
前述のとおり、引用商標の周知著名性は認められないため、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)商標法第4条第1項第7号に関する判示
ア 商標法第4条第1項第7号に該当する商標は、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべき。(平成14年(行ケ)第616号)。
イ 「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大解釈することによって商標登録出願を排除することは、商標登録の適格性に関する予測可能性及び法的安定性を著しく損なうことになるので、特段の事情のある例外的な場合を除くほか、許されない。(平成19年(行ケ)第10391号)。
(2)本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性
被請求人は、本件商標の登録出願前に引用商標の存在を知り、その上で、本件商標を商標登録出願し、商標権を取得したとしても、そのことのみによっては、当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、その登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当するということはできない。
その他、本件商標が「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に当たるといえる具体的な事情を見いだすこともできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
◆コメント:
商標法第4条第1項第7号に関する判断が本審決のポイントであるが、コンマー事件(平成19年(行ケ)第10391号)で判示されているとおり、まさに私的領域まで拡大解釈しないということが貫かれている。
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