登録第5889590号商標の商標登録を維持する。

 
◆理由：

・片仮名の「ウェア」に相当する英単語は「ware」のほか、「着るもの、衣類、服」などを意味する「wear」の英単語もあり、これより、「ネイルウェア」の片仮名からなる本件商標は、申立人主張の「つめに関連する商品」なる意味合いが直ちに想起され、認識されるとはいえない。

・また、申立人主張のうように「つめに関連する商品」の意味合いをもって、商品の品質等を表示するためのものとして使用されていたとしても、わずか2件にすぎず、それらをもって、「ネイルウェア」の語が、本件商標の登録査定時において、その指定商品の品質等を表示するものとして普通に使用されていたということはできない。

・よって、本件商標は、自他商品の識別標識としての機能を果たし得る。

 
◆コメント：
筆者の初見では「ネイルウェア」の語は数多く使用されていると予想したが、証拠として上げられたのは思いの外少なかった。

もう少し証拠を上げることができたら、判断も変わっていたものと考える。

審決公報は以下。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/TA/JPJZH29900015/6B041A807988E06B416F831F98FAF810

原査定を取り消す。 本願商標は,登録すべきものとする。

◆理由：

1）商標法4条1項7号について

商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、
(1)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合のみならず
(2)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、
(3)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、
(4)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、
(5)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、
などが含まれるというべきである。

2）商標法4条1項7号の該当性

本願商標は上記(1)から(5)に該当せず、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標ではない。
（参考：拒絶査定時の理由概要）

 一企業である出願人が、本願商標を自己の商標として独占的に使用すると地域振興を妨げるおそれがあり、また、公正な取引秩序を害するおそれもあるから、本願商標は公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがあるものと判断するのが相当である。

 
◆コメント：

「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」の定義を、Anne of Green Gables事件（平成17年(行ケ)第10349号）から引用し、その一つ一つについて該当性を判断して、結論を導いている点で好感が持てる審決である。

欲を言えば、査定時に同様の判断をしてもらえればと思うのは筆者だけであろうか。
 

審決公報は以下。

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/TA/JPJZH28015915/3F8DA90097F5A6A6424EA297C038C20F

原査定を取り消す。 本願商標は,登録すべきものとする。

 
◆理由：

1）本願商標
本願商標は「ザット」の称呼および「それ」の観念を生じる。

2）引用商標

引用商標は「ザット」の称呼が生じ、特定の観念を生じない。

3）本願商標と引用商標の類否

本願商標と引用商標とは、称呼において同一であるが、外観において著しい差違を有し、観念において紛れるおそれのないものであるから、全体として相紛れるおそれのない非類似の商標である。

◆コメント：

近年は、称呼同一であっても全体非類似となるケースも多く見受けられるが、本審決もこの例である。

指定商品の取引実情からしても、称呼のみで取引するということはなく、妥当な判断であったと考える。

 
審決公報は以下。

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/TA/JPJZH29001921/DBF2FB8A08E289FEF268CC87AE9E10FE

登録第5885343号商標の商標登録を維持する。

 
◆理由：

1）本件商標について
本件商標「Applied Insights」は、いずれか一方の文字部分を強調するような構成態様ではなく、一体不可分のものとして看取されるため「アプライドインサイツ」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。

2）引用商標について
・引用商標1は「インサイツ」の称呼を生じ、「洞察力、眼識、識見」の観念を生じる。
・引用商標2は「アプライドバイオシステムズ」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。

3）本件商標と引用商標との類否

・本件商標と引用商標1とは、外観、称呼及び観念のいずれの点についても、相紛れるおそれのない非類似の商標である。

・本件商標と引用商標2とは、観念において比較できないが、外観及び称呼が非類似であるから、相紛れるおそれのない非類似の商標である。

◆コメント：

本件商標「Applied Insights」は、いずれか一方の文字部分を強調するような構成態様ではなく、一体不可分のものとして看取されると判断されている。

結合商標の判断においては、近年は一体不可分として判断されることがかなり多い傾向にある。

 
審決公報は以下。

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/TA/JPJZH28900416/D437B9D673935B8DC1E8547071941357

商標登録を維持する。

◆理由：

1）「経口保水液」の文字の使用状況

「経口保水液」の文字は、いくつかあるものの、「経口補水液」の誤記であるときが少なからずある。

よって、特定の商品又はその商品の特性を直接的に表示したものとして認識されることはない。

2）商標法3条1項1号の該当性

 特定の商品を表示するものとして一般に広く使用されているといった事実は認められず、取引界において、商品の一般的な名称とされることはない。

よって、商標法3条1項1号には該当しない。

3）商標法3条1項2号の該当性

 特定の商品を表示するものとして一般に広く使用されているといった事実は認められず、取引界において、慣用され自己の商品と他人の商品とを識別することができなくなっていることはない。

よって、商標法3条1項2号には該当しない。

4）商標法3条1項3号および商標法4条1項16号の該当性

「経口保水液」は、「経口摂取して水分を保つための液」ほどの意味合いを想起させるが、指定商品を取り扱う業界において、この意味合いに照応する品質、効能を備えた商品が一般に製造、販売されている事実は見出せない。

よって、商品の品質、効能を表したものとはいえないから、商標法3条1項3号に該当せず、商品の品質の誤認を生ずるおそれもないから、商標法4条1項16号に該当しない。

5）商標法3条1項6号該当性
上記と同様に「経口保水液」は「経口摂取して水分を保つための液」ほどの意味合いを想起させるが、商品の具体的な品質、効能を表したものとして認識されるとはいえず、その他商品の特性を直接的に表示したものとして認識されることはない。
そうすると、その構成自体から自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないということもない。

よって、商標法3条1項6号に該当しない。

 
◆コメント：

筆者も初見では、本件商標「経口保水液」は3条1項3号に該当するのではとの心象を得た。

しかし、公報を読み進めているうちに広く使用されているのは「経口補水液」であることに気づいた。

妥当な判断であり、ネーミング手法としては、取り得る手段ではないかと考える。

 
審決公報は以下。

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/TA/JPJZH29900003/6B041A807988E06B8A004CC79E665734

商標登録を維持する

 
◆理由：

1）引用商標および申立人商標の周知著名性

引用商標及び申立人商標の周知,著名性を具体的に示す証拠がなく、周知著名性があるとは言えない。

2）商標法4条1項11号の該当性

・本件商標：

　「セメダイン」が要部。

　「ハイスピード」は、接着速度が速いことを認識,理解させるにすぎなく出所識別標識としての機能が弱い。

・本件商標と引用商標とは外観、称呼、観念とも類似するものとはいえず、全体として非類似。

よって、商標法4条1項11号に該当しない。

3）商標法4条1項10号の該当性

・申立人商標は周知ではない。

・本件商標と引用商標および申立人商標は非類似の商標である。

よって、商標法4条1項10号に該当しない。

4）商標法4条1項15号の該当性

本件商標と引用商標および申立人商標は類似度の低い商標であり、

需要者等に申立人の業務又はその業務に係る商品と誤信させるおそれ等もない。

よって、商標法4条1項15号に該当しない。

5）商標法4条1項19号の該当性

本件商標の使用による不正の利益を得る目的や他人に損害を加える目的などをうかがわせるような具体的証拠はない。

よって、商標法4条1項19号に該当しない。

6）商標法4条1項7号の該当性

本件商標を使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反することを示す具体的な証拠はない。

よって、商標法4条1項7号に該当しない。

 
◆コメント：
権利者　セメダイン株式会社、申立人　東亞合成株式会社であった。

「ハイスピードEX」等が周知とは言えないことから、妥当な判断であったと考える。

審決公報は以下。

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/TA/JPJZH29900056/6B041A807988E06B8668DB1E1067B5CE

原査定を取り消す。 本願商標は、登録すべきものとする。 

◆理由：

「ボリューム」「仕上げ」「ミスト」の文字が「霧、霧状のもの」の語は一般に知られた語であるが、これらを組み合わた本願商標の構成全体から、特定の意味合いを理解、認識させるとまではいえない。

また、「ボリューム仕上げミスト」の文字が、商品の品質を表示するものとして普通に用いられているとの事実も認められなかった。
よって、取引者、需要者が商品の品質を表示したものと認識することはなく、商標法第3条1項に該当しない。

（参考：拒絶査定時の理由概要）

本願商標を指定商品に使用した場合、「ボリュームを上げるためのミスト状の商品」「ボリューム感のある髪に仕上げるミスト状の商品」であると認識させるにとどまり、単に商品の品質を表示するにすぎない。
よって、商標法第3条1項3号に該当する。

◆コメント：

近年の審決傾向からすると妥当な判断であったと考える。

本願商標が、商品の品質を表示するものとして普通に用いられているとの事実も認められなかった　ことが判断に大きな影響を与えたと推測する。
 
 
審決公報は以下。

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/TA/JPJZH28015714/3F8DA90097F5A6A6F01AB18A8F800714