登録第5861532号商標の商標登録を取り消す。

◆理由：

1）引用使用商標の著名性

申立人提出に係る証拠及び主張等より、引用使用商標は「スポーツウェア、スポーツシューズ、かばん類」等の商品を表すものとして、サッカー愛好者を含むファッション関連の需要者の間に広く認識されていたものである。

2）本件商標と引用使用商標との類似性について

?）本件商標

「ID」の文字は、「複数の利用者を識別するための符号」を意味するインターネット用語として広く知られている語である。

さらに、近年の「ID」の使用実情を踏まえると、「ID」は、自他商品の識別標識としての機能を有しないか又は極めて弱いといえる。

また、「UMBRO」の文字部分は、上記のとおり、著名性のある「umbro」、「UMBRO」、「umBRO」の表示と同一の綴り文字よりなるものである。

よって、

　称呼：「アンブロイド」「アンブロ」

　観念：申立人の著名な「アンブロブランド」の観念を生じる

とするのが相当である。

?）引用使用商標

称呼：「アンブロ」

観念：申立人の著名な「アンブロブランド」の観念を生じる。

よって、本件商標と引用使用商標とは、「アンブロ」の称呼及び申立人の著名な「アンブロブランド」の観念を共通にするものであるから、両商標の類似性は非常に高いというべきである。

3）本件商標の指定商品と申立人商品との関連性並びに商品の取引者及び需要者の共通性

本件商標の指定商品は次のとおりである。

「皮革製包装用容器、かばん類、袋物、携帯用化粧道具入れ、傘、かばん金具、がま口口金、蹄鉄、ステッキ、つえ、つえ金具、つえの柄、愛玩動物用被服類」

これらの相当部分の商品の主な需要者等は、ファッションに関心の高い一般消費者であといえるものであり、申立人商品の「スポーツウェア、スポーツシューズ、かばん類」は、スポーツ用品のほか、ファッション関連商品としても使用されるものであり、その主な取引者、需要者は、スポーツやファッションに関心の高い一般消費者といえる。

よって、本件商標の指定商品と申立人商品とは、相当な部分において取引者、需要者を共通にするといえることから、互いに密接な関連性を有する商品といえる。

4)出所混同のおそれ

引用使用商標は著名商標であり、本件商標と引用使用商標とは類似性が非常に高く、取引者等も共通にする場合が多いといえる。

よって、出所の混同を生じるおそれがある。

◆コメント：

初見では、本件商標「UMBROID」について「UMBRO」「ID」とは認識することができず、どのような称呼になるのか頭を巡らした。

本件商標と引用使用商標の類似性が非常に高いという判断は、やや強引なところがあったのではないかと考える。

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◆理由：
1）本件商標
「妄想」は「根拠のない主観的な想像や信念」を意味し、「婚姻届」は「婚姻が有効に成立するために必要な手続」を意味する語として、一般に知られているものであるが、構成全体をもって、既成の語ないし特定の事物を表したものとして認識されるとみるべき事実は見当たらない。

よって、本件商標は、一種の造語を表してなるものと理解され、特定の商品の特性を直接的に表示したものとして認識されるとまではいい難い。

2）商標法4条1項16号の該当性
上記のとおり、本件商標は特定の商品の特性を直接的に表示したものとして認識されるものではないから、
商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標ということはできない。

3)商標法3条1項6号の該当性
上記のとおり、本件商標は特定の商品の特性を直接的に表示したものとして認識されるものではなく、商標法3条1項6号に該当しない。

4)商標法4条1項7号の該当性
本件商標を申立てに係る商品に使用することについて、我が国の法令による制限がされている事実は見いだせず、その使用が社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するものとも認められない。

さらに、本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではなく、一般に国際信義に反するものでないことは明らかであり、ほかに、本件商標の登録出願の経緯に社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして、到底容認し得ない場合に該当すると認めるに­る事実も見いだせない。

よって、本件商標は公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標ということはできない。

◆コメント
確かに、「妄想用婚姻届」に接した需要者等が、特定の商品の特性を把握できると者は極めて少数であろうと筆者は推測する。
よって、妥当な審決であったと考える。

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◆理由：
1）商標法3条1項3号の該当性
本願商標の構成中の「小さな」は、「規模などが大きくない」の意味を有する「小さい」の連体形で、「お葬式」は、「死者をほうむる儀式。葬儀。」の意味を有することから、全体として「規模の大きくない葬儀」程の意味合いが理解される。

また、本願の指定役務に関連する分野では、「小さなお葬式」の文字が「規模の大きくない葬儀」程の意味合いで使用されている実情が多数ある。

よって、自他役務の識別標識としては認識し得ず、その役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認められる。

2）商標法3条2項の該当性
①請求人の業界内シェア
請求人の葬儀取扱件数のシェアは2%程度であるが、この業界では高いシェアを占める独占企業が存在しないため、請求人の葬儀取扱件数は第3位でありトップレベルのシェアを占めているといえる旨主張しているが、シェアが2%程度であることから、請求人の葬儀取扱件数のシェアは決して高いものとはいえない。

②アンケート調査
アンケート調査において「小さなお葬式」が高い認知度がある旨主張しているが、日本全国を対象としておらず、大阪府と静岡県という限られた地域でのみで行われており、また、アンケートの内容も、選択肢にあった18社の中から選ばれたと説明された葬儀会社の名称等に関するものであることからすれば、そのアンケートの信頼性は低いものであって、この結果をもって本願商標が全国的に認識されているものと認めることができない。

上記等のことから、本願商標は、取引者、需要者の間に広く認識されているとはいい難く、商標法3条2項に該当するとはいえない。

◆コメント
「小さなお葬式」の他者使用例が多数出てきたことから、商標法3条1項3号に該当するとの判断は、近年の審決傾向にそった極めて妥当なものであったと考える。

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登録第5880430号商標の商標登録を維持する。

◆理由：

1）申立人使用商標の周知著名性

申立人の提出する証拠には宣伝費用やダイレクトメール送付件数等が記載されていたが、本件商標出願日後のものであった等によっては、申立人使用商標が、需要者の間に広く認識されているとは認めることはできない。

2）本件商標と申立人使用商標との類否

本件商標と申立人使用商標とは、称呼を同一にする。

また、本件商標と欧文字からなる申立人使用商標とは、つづりを同一とすることから、両商標は、類似するといえる。

3）商標法第4条第1項第10号該当性

申立人使用商標の周知著名性が認められないため、商標法4条1項10号の要件を充たさない。

4）商標法4条1項15号の該当性

上述のとおり、申立人使用商標の周知著名性が認められないため、その指定商品について使用しても、これに接する需要者等が商品の出所を混同するおそれはない。

◆コメント：

周知著名性の立証の証拠収集の困難を感じる。

平素から意識するのは容易なことではないが、このような事態に備えて証拠収集の必要性を肝に念じておきたい。

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◆理由：
1）本願商標
称呼：「モッチリギョーザ」
観念：「弾力があって柔らかく、ねばりつくような食感の餃子」

2）本願商標の要部は「もっちり」か
本願商標は、その指定商品との関係において、その構成中の「餃子」の文字が指定商品を表すものであるとしても、かかる構成、称呼及び意味合いにおいては、本願商標に接する需要者等が、殊更「もっちり」の文字部分に着目するというよりは、むしろ、その構成全体をもって一体不可分のものと認識、把握するとみるのが自然であり、他に、「もっちり」の文字部分のみをもって取引に資されるとみるべき特段の事情は見いだせない。

よって、本願商標から「もっちり」の文字部分を分離、抽出し、その上で、本願商標と引用商標とが称呼及び観念を共通にする類似の商標であるとして、本願商標が商標法4条1項11号に該当するとした原査定は、取消しを免れない。

◆コメント
指定商品が「餃子」であるので、「もっちり」を要部とする認定も従来ならあったであろうが、本件審決では格別冗長ではなくよどみなく一連に称呼できる等の理由から、「もっちり餃子」を一体不可分のものとして認識する旨、判断した。

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◆理由：
1）本願商標
「ドクター」は「医者」、「ウォーター」は「水」の意味を有する外来語として、いずれも一般に慣れ親しまれた語であるものの、これらを結合してなる「ドクターウォーター」の文字から直ちに特定の意味合いが想起されるとは認め難く造語を表したものである。
よって、
　称呼：「ドクターウォーター」
　観念：特定の観念を生じない。
となる。

2）引用商標
称呼：「ドクターズウォーター」
観念：「医者の水」

3）本願商標と引用商標との類否
①外観
本願商標と引用商標とは、二段書きと一段書き及び欧文字部分の有無という明確な差異を有するものであるから、外観上、相紛れるおそれはない。

②称呼
本願商標から生じる「ドクターウォーター」の称呼と引用商標から生じる「ドクターズウォーター」の称呼とを比較すると、両称呼は、「ドクター」の音と「ウォーター」の音を共通にし、比較的聴者の耳に残り難い中間における「ズ」の音の有無という差異があるにすぎず、さらに、引用商標を称呼するにあたっては、「ズ」の音の母音(ｕ)が、直後の「ウォ」の音に吸収されやすいといえることから、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、その語調、語感が近似し、互いに聴き誤るおそれがあるというのが相当である。

③観念
本願商標は、特定の観念を生じないものであるから、引用商標と比較することができず、本願商標と引用商標とは、観念上、類似するとはいえない。

本願商標と引用商標とは、称呼において互いに聴き誤るおそれがあるとしても、外観において相紛れるおそれがなく、観念において類似するとはいえないから、全体的に考察すれば、商品の出所について混同を生じるおそれのない非類似の商標というべき。

よって、商標法4条1項11号には該当しない。

◆コメント
外観非類似、称呼類似まではもちろん筆者も同意するが、観念は非類似としてよいのだろうか。
本願商標には、確かに引用商標のように所有格を表す「’s」は存在しないが、それがないとしても「医者の水」という観念がこれに接する需要者等であれば生じるのではないだろうか。
なんとも、モヤモヤ感が残る。

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