◆理由：
本願商標「発育」の文字は、「育って大きくなること。成育。」の意味を有する語である。

そして、本願の指定商品であるペットフードや飼料の分野においては、ペットや家畜の成長段階に応じて必要な栄養を配合した商品が多数取引されており、これらの商品の特徴や効果等の説明に、たとえば「健康的な発育のために」、「発育速度の速い大型犬の幼犬の健康な発育に配慮」、「離乳子豚の発育のために」のように、「発育」の文字が一般的に使用されている実情がある。

そうすると、「発育」の文字からなる本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、ペットや家畜等の発育のために必要な栄養を配合した商品であるという、商品の特徴や効果を説明するための語であると理解、認識するにすぎないものであるから、本願商標は、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものであり、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標というべきである。

よって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。

◆コメント
妥当な審決であったと考える。

審決公報はここをクリック。

 
◆理由：
本願商標の「Gateau」が、「菓子」の意味を有するフランス語であり、「Rusk」が、菓子の一種である「ラスク」の意味を有する英語であるところ、それらを結合した本願商標の構成全体から、原審説示のように「洋菓子のラスク」の意味合いが直ちに想起され、商品の具体的な品質を表示するものと理解されるとはいい難い。

また、本願の指定商品について、「Gateau Rusk」が、商品の具体的な品質を表示するものとして、取引上、広く一般に使用されていると認めるに­る事実は発見できなかった。

これより、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当しない。

  
◆コメント
妥当な審決であったと考える。

審決公報はここをクリック。

 
◆理由：
本願商標の「低温」は「低い温度。」の意味を、「製法」は「製造の方法。」の意味を有する語であって、全体として「低い温度で製造した米」程の意味合いを想起させることがあるが、この意味合いが、商品の特定の品質を具体的かつ直接的に表したものとはいい難い。

また、本願の指定商品を取り扱う業界において、「低温製法米」の文字が、商品の具体的な品質等を表示するものとして取引上一般に使用されている事実は発見できず、また、需要者が商品の具体的な品質等を認識すると認めるに­る事実も見いだせない。

よって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当しない。

◆コメント
本審決の判断の大きな決め手となった要因として、「低温製法米」の使用実績がなかったことにあるだろう。

審決公報はここをクリック。

 
◆理由：
本願商標の「シトラス」は、「柑橘類」の意味を有する語として、「フローラル」は、「花の、花のような」の意味を有する語として、いずれも親しまれている。 

そして、香料の分野においては、「シトラス」の文字は、「柑橘様の香り」、「フローラル」の文字は、「花様の香り」を表す香りの表現用語であり、いずれも香りを分類したりするときにも多く用いられる語であること、香りを表現する場合には、「○○フローラル」「○○シトラス」のように、2つの語を組み合わせて表現する方法があることの記載が認められるとともに、「シトラスフローラル」、「シトラス・フローラル」の文字が、商品が発する香りの種類を表す語句として、広告等に一般に使用されている事実が認められる。

そうすると、「シトラスフローラル」の文字からなる本願商標は、これに接する需要者等に、商品が発する香りの種類を表す語句の一つであると理解させるにとどまり、自他商品の識別標識としての機能を有するものとはいえず、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標といわざるを得ないものである。

よって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。
  

◆コメント
すでに「シトラスフローラル」が商品が発する香りを表す語として使用されているので、登録は難しいであろう。

審決公報はここをクリック。

 
◆理由：
1 商標法第4条第1項第10号該当性について
申立人提出の証拠等から、引用商標の周知性は認められない。

(2)本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標とは、外観及び称呼を同じくする類似の商標というべきである。

 
(3)小括
本件商標と引用商標は類似の商標であるが、引用商標の周知性は認められないため、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。

2 商標法第4条第1項第19号該当性について
引用商標の周知性が認められないことに加え、申立人提出の証拠から、本件商標が引用商標の周知性などに便乗して不正の利益を得ることを目的にしていたとか、申立人に損害を与えることを目的に登録出願したとの事情は見いだし得ない。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。

  
◆コメント
妥当な審決であると考える。

審決公報はここをクリック。

 
◆理由：
(1)引用商標の周知性について
申立人提出の証拠では、米国車キャデラックに関する紹介記事の中のわずか一部で「Caddy」又は「キャディ」の語が同車の愛称として用いられているにすぎないものである上、我が国の需要者向けとは認め難い全て英語による記事などもあり、いずれも「Caddy」又は「キャディ」の語が同車を指称するものとして、我が国の需要者において広く知られていることを示すには十分ではない。

したがって、引用商標は、周知性は認められない。

(2)本願商標の商標法第4条第1項第10号該当性について
上記のとおり、引用商標の周知性は認められないことから、本願商標は、その余の点について検討するまでもなく、商標法第4条第1項第10号には該当しない。
  
◆コメント
筆者も、「CADILLAC」の愛称が「Caddie」または「Caddy」であることは知らなかった。

審決公報はここをクリック。

 
◆理由：
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
称呼：「ヒホー」
観念：特定の観念を生じない。

イ 引用商標
称呼：「ヒショー」
観念：特定の観念を生じない。

ウ 本件商標と引用商標との対比
(ア)外観
本件商標と引用商標は、毛筆風の書体で表した漢字2字とそのローマ字表記を表した点、漢字2字のうち、語頭の文字が「飛」である点において共通にする。

しかし、
　(i)その2字目において、字形及び意味の全く異なる「砲」と「匠」の文字を配した点、　　
　(ii)本件商標は、縦書きであるのに対し、引用商標は、横書きである
点において、差異を有する。

そして、両商標は、「飛」の文字を共通にするとしても、「砲」及び「匠」の文字から受ける意味及び外形を伴う印象が大きく異なるものといえる。

また、両商標のローマ字表記部分についてみると、「S」の文字の有無において、差異を有する。

これより、本件商標と引用商標は、これらを時と所を異にして離隔的に観察した場合においても、外観上相紛れるおそれはない。

(イ)称呼
両商標の称呼を比較すると、その中間において「ホ」と「ショ」の音の差異を有する。

両音は、母音を共通にするが、調音の方法及び位置が異なることにより、音調が明確に異なる。

その上、両称呼は、3音という短い音構成からなることとあいまって、これらを全体として称呼した場合には、その語調、語感が著しく相違したものとなり、称呼上相紛れるおそれはない。

(ウ)観念
観念上相紛れるおそれはない。

よって、本件商標と引用商標は、外観、称呼及び観念のいずれの点においても、相紛れるおそれのない非類似の商標であり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

(2)商標法第4条第1項第10号及び同項第15号該当性について
ア 申立人商標の周知性
申立人提出の使用証拠をもって、申立人商標が周知性を獲得していたとまではいえない。

イ 本件商標と申立人商標との類否
上記のとおり、両商標は非類似の商標である。

ウ 小活
これより、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び商標法第4条第1項第15号に該当しない。

(3)商標法第4条第1項第19号該当性について
申立人商標の周知性は認められず、本件商標は、申立人商標と相紛れるおそれのない非類似の商標であり、加えて、本件商標が不正の目的をもって使用する商標であると認めるに­りる証拠の提出はない。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。

◆コメント
引用商標の「匠」の字が筆記体でやや崩された文字となっており、筆者の初見では一瞬どのような感じであるか判断に迷ってしまった。

とはいえ、通常の注意力があれば本件商標と引用商標を混同することはないであろう。

審決公報はここをクリック。