原査定を取り消す。 本願商標は,登録すべきものとする。

◆理由：

本願商標は、外観上まとまりよく一体的に表され、「サクラピンク」の称呼も無理なく一連に称呼できる。

「サクラピンク」の文字からは、「さくら(桜)の桃色」程の意味合いを理解させる場合があるとしても、これが直ちに本願指定商品の色彩を表示したものと理解、認識させるものとはいい難い。

請求人以外の者が「サクラピンク」の文字を使用している事実を発見することができず、需要者等が商品の品質(色彩)を表示したものと認識するというべき事情もない。

よって、商標法3条1項3号に該当しない。

 
◆コメント：

筆者も「サクラピンク」をネット検索してみたところ、請求人の商品以外にもいくつか見受けられたが、

時計を対象に使用しているものは見つけられなかった。

また、請求人の商品の使用事例は多く見受けられたこともあり、仮に3条1項3号に該当するとの判断が

なされたとしても、3条2項が認められたと思われる。

審決公報はここをクリック。

原査定を取り消す。 本願商標は、登録すべきものとする。

◆理由：

1）本願商標と引用商標1との類否

①商標について

本件商標と引用商標1は類似する。

②指定商品について

拒絶査定において、本願商標の指定商品「身飾品」と引用商標1の指定商品「織ネーム、織マーク」が類似するものとされた。

商標法第4条第1項第11号における商品の類否判断は、取引の実情、すなわち、

　1)生産部門が一致するかどうか

　2)販売部門が一致するかどうか

　3)原材料及び品質が一致するかどうか

　4)用途が一致するかどうか

　5)需要者の範囲が一致するかどうか

　6)完成品と部品との関係にあるかどうか

等を総合的に考慮して判断をすべきものであり、その類否は、2つの商品に同一又は類似の商標が使用された場合、これに接する取引者、需要者が商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるかどうかにより判断すべきものである。 

本願商標の指定商品中の「身飾品」は、イヤリング等であって、その用途は主として身を飾るためのものであり、原材料は、主に貴金属である。

引用商標1の指定商品中の「織ネーム,織マーク」は、衣服等に付ける標識用の織物であって、その用途は主としてブランドのイメージを示すためのものであり、原材料は、布製の織物等である。

両者は、その用途及び原材料が明らかに相違し、また、これらは、完成品と部品の関係にもなく、生産、販売及び需要者の範囲が共通するとはいい難い。

 
よって、これに接する取引者等が出所の混同を生ずるおそれはく、両商品は非類似の商品である。

これより、本願商標と引用商標1は非類似の商標である。

2）本願商標と引用商標2との類否

補正の結果、両者は非類似となった。

3）本願商標と引用商標3との類否

引用商標3は、「Onlyou」の欧文字を筆記体で表しており、造語である。

「オンリョー」の称呼を生じるというのが相当であり、特定の観念を生じないものである。

本願商標と引用商標3は称呼において明らかに異なる。

4）本願商標と引用商標4との類否

出願人名義変更届の提出の結果、両商標の出願人は同一となった。

 
◆コメント：
本審決のポイントは2つあり、一つ目のポイントは本願商標と引用商標1の指定商品の類否である。

この点で、審判官は審査基準を引用し、要件一つ一つを検証し、商品非類似の結論を導いた。

もう一つのポイントは、引用商標3の称呼の認定である。

筆者も初見では「オンリーユー」と読んでしまい、また当該国際商標公報の称呼の欄にも「オンリーユー」の記載がある。

高裁まで争ったとしたら異なった結果となった可能性もある。

審決公報は以下。

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/TA/JPJZH28005564/3F8DA90097F5A6A6374ACAD051E2F19B

原査定を取り消す。 本願商標は、登録すべきものとする。

 
◆理由：

1）本願商標について

本願商標は、「HARMONY」「IQ」の両語の間に、軽重の差を見いだすことができず、「HARMONY IQ」の構成文字全体をもって、取引に資される。

その観念については、商標全体として特定の意味合いを生じないものの、上述のとおり、両語が広く親しまれた語であることに鑑みれば、「調和と知能指数」に関連した意味合いを認識させるというべきである。

2）本願商標と引用商標の類否

①外観

外観上、判別し得る。

②称呼

本願商標は、「ハーモニーアイキュー」の称呼を生ずるのに対し、引用商標は、「ハーモニー」の称呼を生ずる。

よって、称呼上、明らかに異なる。

③観念

本願商標は「調和と知能指数」に関連した意味合いを認識させるのに対し、引用商標は「調和」の観念を生ずる。

よって、観念上相紛れるおそれはない。

よって、本願商標と引用商標は全体として非類似の商標である。

◆コメント：

本願商標について、構成する両語の軽重はなく、一体不可分であるとして、4条1項11号の該当性を否定した。

妥当な審決であると考える。

なお、最終判断には影響を与えないが、観念について、本願商標は造語であり観念は特に生じないとしてもよかったのではないだろうか。

 
審決公報は以下。

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/TA/JPJZH28017090/3F8DA90097F5A6A6021AC0E6FC73C9C0

登録第5886768号商標の商標登録を維持する。
 
◆理由：

1）商標法3条1項3号の該当性

本件商標中の「うま味の素」の文字部分は、多数あるうま味物質のうちのどの物質であるか必ずしも特定されているわけではなく、「センサ」と一体となって、どのようなうま味物質を感知する機器であるのか具体的ではない。
これより、需要者等が、直ちに「グルタミン酸等を測定し、数値化する商品」などの意味合いを表したと認識することはできない。

また、「うま味の素センサ」の語が、商品の品質、用途等を表示するためのものとして普通に使用されている事実も見出せない。

よって、本件商標は、商品の品質、用途等を表示するものはなく、構成全体をもって特定の意味合いを想起させない一種の造語を表したと認識される。

これより、商標法3条1項3号には該当しない。

2）商標法4条1項16号の該当性

上記1）より、商品の品質について誤認を生じさせるおそれはない。

3）商標法4条1項8号の該当性

①商標法4条1項8号の趣旨

商標法第4条第1項第8号が、他人の肖像又は他人の氏名、名称、著名な略称等を含む商標は、その他人の承諾を得ているものを除き、商標登録を受けることができないと規定した趣旨は、人(法人等の団体を含む。以下同じ。)の肖像、氏名、名称等に対する人格的利益を保護することにあると解される。すなわち、人は、自らの承諾なしにその氏名、名称等を商標に使われることがない利益を保護することにあるところ(最高裁平成17年7月22日第二小法廷判決・裁判集民事217号595頁)、問題となる商標に他人の略称等が存在すると客観的に把握できず、当該他人を想起・連想できないのであれば、他人の人格的利益が毀損されるおそれはないと考えられる。そうすると、他人の氏名や略称等を「含む」商標に該当するかどうかを判断するに当たっては、単に物理的に「含む」状態をもって­りるとするのではなく、その部分が他人の略称等として客観的に把握され、当該他人を想起・連想させるものであることを要すると解すべきである(知財高裁平成21年(行ケ)第10074号、同21年10月20日判決参照)。

②本件における商標法4条1項8号の該当性

本件商標は、「ウマミノモトセンサ」と称呼され、特定の意味合いを想起させない一種の造語である。
そうすると、本件商標は、その構成中の「味の素」の文字部分のみが独立して把握、認識されるものではないから、これに接する需要者をして、申立人を想起、連想させることはないというべきである。

よって、他人の著名な略称を含む商標ということはできない。

3）商標法4条1項15号の該当性

本件商標は、一体不可分の造語からなるものと認識されるとみるのが相当であり、「味の素」の文字部分のみが独立して認識されるものではないから、申立人の略称である「味の素」の表示とは、全く別異の商標である。

さらに、指定商品である第9類「測定機械器具及びその部品としての使い捨てカートリッジ」等と「うま味調味料」とは、商品の用途、性質、機能、原材料等において著しく相違するばかりでなく、その生産者等においても著しく相違するものであるから、両商品の関連性は極めて薄い。

よって、商品の出所について混同を生じさせるおそれのある商標ではない。

 
◆その他：

異議申立人は、味の素株式会社である。

 
◆コメント：

本件商標「うま味の素センサ」から「味の素」部分が独立して認識されるか否かの判断が、商標法4条1項8号および15号の該当性判断の鍵となった。

審決では、

・本件商標は同一の書体をもって、同一の大きさ、等間隔で表されているものであり、また、該文字から生ずる「ウマミノモトセンサ」の称呼も、無理なく一連に称呼できるものであるから、構成全体をもって特定の意味合いを想起させない一種の造語を表したと認識される

としている。

また、4条1項8号においては、「INTELLASSET事件」(知財高裁平成21年(行ケ)第10074号)を引用し、

・他人の略称等を「含む」商標に該当するかどうかを判断するには、単に物理的に「含む」状態をもって­りるとするのではなく、その部分が他人の略称等として客観的に把握され、当該他人を想起・連想させるものであることを要する

とし、本件商標からは「味の素」想起させないと判断した。

筆者の初見でも本件商標に接した際には「味の素」は想起することはなかった。

審決公報は以下。

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/TA/JPJZH29900005/6B041A807988E06BA235090F28E42C44

原査定を取り消す。 本願商標は、登録すべきものとする。

 
◆理由：

本願商標を構成する「富士山」「岡村」及び「牛」の各文字が特定の意味を有する語であるとしても、当審における職権による調査等によれば、本願商標は、常に一体的に使用されている。

原審説示のように、これに接する需要者が各構成文字全てについて、分離して理解した上で、本願商標を観察するとはいい難く不可分一体の商標と認識される。

これより、本願商標は、自他商品の識別標識としての機能を有しないとはいえず、

需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないとはいえない。

よって、商標法3条1項6号に該当しない。

（参考：拒絶査定時の理由概要）

本願商標の構成中、

『富士山』の文字部分は、商品の産地を認識させるにすぎない。

『岡村牛』の文字部分のうち、

　　『岡村』の文字は、ありふれた氏を理解させ、

　　『牛』の文字は、本願の指定商品との関係において、原材料である『牛肉』を理解させる

から、本願商標の構成中、『岡村牛』の文字部分は、ありふれた氏と、商品の原材料を認識させるにすぎない。

よって、本願商標は、その構成中のいずれの部分も自他商品の出所識別標識として機能しないから、全体としても、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない。

 
◆コメント：

審判段階では、取引実情を考慮して「富士山 岡村牛」が常に一体で使用されており、不可分一体として認識されるとの判断し、

識別力があるとした。

取引実情を考慮すべきかは、頻繁に議論の対象となるため、ここでは言及しないが、

仮に取引実情を考慮しなかったとしても、商標の構成から不可分一体として認識されると判断すべきと考える。

 
審決公報は以下。

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/TA/JPJZH28018169/3F8DA90097F5A6A6DABBAEBA13A584FA