◆対象商標:
「METALICA」
第9類
第14類
◆種別と審判番号:
異議の決定
異議2016-900260
◆確定日:
2017/03/31
◆関連条文:
商標法4条1項8号
商標法4条1項15号
◆引用商標:
国際登録第858989号商標 「METALLICA」
登録第5851357号商標の商標登録を維持する。
◆理由:
1 商標法第4条1項8号の該当性
(1)商標法第4条第1項第8号の趣旨
商標法4条1項8号にいう「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称」(以下「他人の名称等」という。)に該当するのは、その人格的利益として保護に値する表示であることから、その表示は、正式な氏名、名称、あるいは、その本人を指し示すものとして受け入れられている著名な略称等と同一であることを要するというべきであって、「他人の名称等」に類似する標章は含まれないと解するのが相当である。
(2)検討
本件商標は「METALICA」であり引用商標は「METALLICA」である。
よって、本件商標は、ヘビーメタルバンドの名称及び申立人の正式名称とは同一、あるいは、それと同一の表示を含むものではないから、他人の名称等を含むものとはいえない。
よって、商標法4条1項8号に該当しない。
2 商標法4条1項15号について
(1)引用商標の著名性
申立人の提出した証拠によると、(一部の商品の分野で需要者等に知られていたとしても)本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標を付した商品が申立人等を表示するものとして、我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていたと認めることはできないし、他にこれを認めるにりる証拠はない。
(2)本件商標と引用商標との類似性
ア 本件商標
称呼:「メタリカ」
観念:特定の観念は生じない。
イ 引用商標
称呼:「メタリカ」「メタルリカ」
観念:特定の観念は生じない。
ウ 類否判断
外観:
「L」の有無という違いのみであることから明瞭な差異を有するとはいえず、類似といえる。
称呼:
共通である。
観念:観念においては比較できない。
これらを総合勘案すれば、本件商標と引用商標とは、相紛れるおそれのある類似の商標である。
(3)本件商標の指定商品と引用商標が使用される申立人使用商品との関連性
本件商標は、第9類に属する携帯電話及びその関連商品、コンピュータ関連の商品、携帯情報端末等並びに第14類に属する時計等を指定商品とする。
一方、申立人使用商品は、Tシャツ、帽子(キャップ)、ポスター、バッジ等及び音楽のアルバム・ビデオデープ等である。
よって、本件商標の指定商品と引用商標の使用商品との関連性は低い。
これより、本件商標と引用商標が類似の関係にはあるが、本件商標の指定商品の分野との引用商標が使用される申立人使用商品との関連性も低いことから商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものと認めることはできず商標法4条1項15号に該当しない。
◆コメント
商標法4条1項8号の趣旨において「国際自由学園事件」(最高裁平成17年7月22日第二小法廷判決・裁判集民事217号595頁)を引用し、「他人の名称等」に類似する標章は含まれない旨説示し、これに本事案をあてはめていっている。
納得感のある審決である。