◆対象商標:
「HP MAKER」
◆指定商品役務:
第42類「ウェブサイトの制作,電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守,ウェブサイト用のコンピュータプログラムの提供」等
◆種別と異議申立番号:
異議の決定
異議2017-900253
◆異議決定日:
2018/03/09
◆関連条文:
商標法第4条第1項第10号
商標法第4条第1項第15号
◆引用商標:
コンピュータ関連の分野において、HP社の略称及び商品役務を表す「HP」
登録第5948103号商標の商標登録を維持する。
◆理由:
1 引用商標の著名性について
申立人提出の証拠等から、「HP」の文字からなる引用商標は、PC及びプリンターについて、HP社の略称又は商品を表すものとして、我が国のコンピュータ関連商品を取り扱う分野の取引者、需要者の間に相当程度知られていることが認められる。
しかし、申立人提出の証拠からは、本件商標の指定役務である「ウェブサイトの制作,電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守,ウェブサイト用のコンピュータプログラムの提供」等に関連する役務の分野については、具体的な役務の提供に係る実績や広告等の実情を把握することはできず、また、同分野におけるマーケットシェア、第三者によるHP社の評価等も窺い知ることもできない上、役務の提供について、引用商標の使用をしているか否かも不明である。
よって、引用商標は、本件指定役務の分野においては、広く知られていると認めることはできず、コンピュータ関連商品の分野における引用商標の著名性が、本件指定役務の分野にまで及ぶとみるべき理由も見当たらない。
したがって、本件指定役務の分野において、引用商標の著名性は認められない。
2 商標法第4条第1項第10号該当性について
(1)本件商標と引用商標との類否について
ア)本件商標
本件商標は、同書、同大で、まとまりよく一体的に表されており、「エイチピーメーカー」の称呼も、よどみなく一連に称呼し得る。
そして、「HP」は、「ホームページ(homepage)」の略語としても理解され、また、「MAKER」の文字は、「製造者、作る人、作る機械」等を意味するものとして一般に広く知られている英単語である。
よって、
称呼:
「エイチピーメーカー」
観念:
「ホームページを作成するもの」
となる。
イ)引用商標
称呼:
「エイチピー」
観念:
「HP社の略称」又は「HP社がPC及びプリンターに使用するブランド」
ウ)本件商標と引用商標との類否
外観:
構成文字の相違により、明確に区別し得る。
称呼:
「メーカー」の音の有無という顕著な差異を有するものであるから、明瞭に聴別できる。
観念:
全く異なる観念を生ずる。
よって、本件商標と引用商標とは、非類似の商標である。
(3)小括
これより、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)出所の混同を生じるおそれについて
HP社がPC及びプリンターについて使用する引用商標は、相当程度の著名性が認められるものであって、この商品は、本件商標の指定役務との関連性がある程度あるものと認められる。
しかしながら、「HP」の文字は、その指定役務との関係において、「ホームページ」の意味合いを認識させるものであって、本件指定役務の分野において著名性が認められないHP社を想起するとはいえないと判断するのが相当である。
よって、本件商標をその指定役務に使用した場合、これに接する需要者が、引用商標を想起、連想して、当該役務をHP社の業務に係る役務、あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生じさせるおそれがある商標ということはできない。
(2)小活
これより、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
◆コメント
とても興味深い案件であった。
本審決ではPCおよびプリンターは、本件商標の指定役務である「ウェブサイトの制作」等とある程度の関連性があるとは認めたものの、「HP」は、この指定役務では著名性を獲得しているとはいえず、指定役務との関係から本件商標「HP MAKER」は「ホームページを作成するもの」という単一の観念が生じると判断している。
しかし、PCおよびプリンターとウェブサイトの制作とは需要者層等も重なる部分が多く、「HP MAKER」に触れた需要者は、HP社と何らかの関連があると混同してしまう場合もあるのではないだろうか。
非常に考えさせれられる案件であった。