◆対象商標:
「山岸一雄」
第30類 つけ麺用の中華麺 等
第43類 つけ麺を主とする飲食物の提供
◆種別と審判番号:
拒絶査定不服の審決
不服2014-24079
◆確定日:
2017-06-16
◆関連条文:
商標法4条1項8号
本件審判の請求は、成り立たない。
◆理由:
1 商標法4条1項8号
1)趣旨
人(法人等の団体を含む。以下同じ。)の肖像、氏名、名称等に対する人格的利益を保護することにあると解される。すなわち、人は、自らの承諾なしにその氏名、名称等を商標に使われることがない利益を保護されているのである。(最高裁平成16年(行ヒ)343号、平成17年7月22日判決)
2)他人の名称と周知著名性との関係
著名あるいは周知であるといったことは、考慮する必要がないというべきである。
(知的財産高等裁判所平成20年(行ケ)10309号、平成21年2月26日判決)
3)
出願人と他人との間での商品又は役務の出所の混同のおそれの有無、いずれかが周知著名であるということなどは考慮しない。
(知的財産高等裁判所平成21年(行ケ)10005号、平成21年5月26日判決)
2 本件における商標法4条1項8号の該当性
本件商標は、他人の氏名である「山岸一雄」と同一のものである。
そして、他人の氏名を含む商標については、請求人と他人との間で、いずれが著名あるいは周知であるといったことは、考慮する必要はなく、「山岸一雄」と同一の氏名である個人が、少なくとも20名存在し、かつ、請求人は、本願商標を登録することについて、上記の個人から承諾を得たことを証明する書面を提出していない。
よって、商標法4条1項8号に該当する。
3 請求人の主張について
1)請求人は、つけ麺と強く結びついた同氏の著名性を考慮すれば、「山岸一雄」の氏名からなる本願商標が登録されたとしても、その商標登録が原因で他人の人格権の毀損が認められる事態は考えられない旨主張する。
しかし、他人の氏名を含む商標について商標登録を受けること自体が、その氏名を有する他人の人格的利益の保護を害するおそれがあるものとみなすものと解される。
2)さらに、請求人は、諸外国において、ある人物の氏名が、同姓同名の他人が存在することのみを理由に、その他人の同意がなければ一律に商標登録を受けられないとしている国は存在しない旨主張する。
しかし、諸外国と我が国の商標保護に関する法制は、細部においては自ずと異なるものであり、諸外国における事情をもって、本願商標についての判断が左右されるべきではない。
◆コメント:
判決に基づいた妥当な結論であると考える。
しかし、過去の登録例をみると出願人以外に同姓同名の者が存在すると推測されるものもあり、釈然としない思いもある。