「新卒採用の教科書」

登録第5868582号商標の商標登録を維持する。

◆理由：

1 商標法第4条第1項第11号該当性について

(1)本件商標について

本件商標「新卒採用の教科書」の文字を、同一の書体、同一の大きさ、同一の間隔で表してなるところ、その構成は、「新卒採用」と「教科書」の文字を、助詞「の」で結合してなるから、外観上、まとまりよく一体的に看取、把握されるというのが相当であり、これから生じる「シンソツサイヨウノキョウカショ」の称呼も、やや冗長であるとしても、よどみなく一連に称呼できるものというのが相当である。

これより、

称呼：

「シンソツサイヨウノキョウカショ」

観念：

特定の観念を生じない

となる。

(2)引用商標について

称呼：

「サイヨウノキョウカショ」

観念：

特定の観念を生じない

(3)本件商標と引用商標との類否について

外観：

判然と区別し得る。

称呼：

聞き誤るおそれはない。

観念：

比較することはできない。

これより、本件商標は、引用商標とは非類似の商標である。

(4)小括

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

2 商標法第4条第1項第15号該当性について

(1)引用標章の周知性について

申立人の提出した証拠からは、引用標章が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務を表示するものとして、我が国の需要者の間で広く認識され周知になっていたと認めることはできない。

(2)出所の混同について

上記のとおり、引用標章「採用の教科書」は、需要者の間において広く知られていたものとは認めることができないものであり、また、引用標章は、本件商標とは類似しない。

これより、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者が引用標章を連想又は想起することはなく、その商品が申立人あるいは申立人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

◆コメント：

本審決のポイントは、本件商標「新卒採用の教科書」が一連一体の商標であると判断されたことである。

殊更、「採用の教科書」の部分が支配的な印象を与えるというわけもなく、他の理由もないことから妥当な判断であったと考える。

審決公報はここをクリック。