◆対象商標:
「景徳鎮本店」
◆指定商品役務
第43類「飲食物の提供」
◆種別と異議申立番号:
異議の決定
異議2016-900194
◆異議決定日:
2016/12/22
◆関連条文:
商標法3条第1項柱書
商標法第4条第1項第7号
商標法第4条第1項第10号
商標法第4条第1項第15号
商標法第4条第1項第19号
◆引用商標
異議申立人が「四川料理等の中華料理を主とする飲食物の提供」について使用している以下の商標。
1)「景徳鎮」
2)「景徳鎮本店」
登録第5840997号商標の商標登録を維持する。
◆理由:
(1)引用商標の周知性について
申立人提出の証拠等から、引用商標1「景徳鎮」は、本件商標の登録出願時ないし登録査定時において、他人(申立人等)の業務に係る役務であることを表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
また、引用商標2「景徳鎮本店」も、本店が雑誌等でそのような名称で紹介されたことがあるとしても、その数は数回であって、かつ、これが本店のホームページ、看板及びメニュー等で使用されている事実は確認できないから、本件商標の登録出願時ないし登録査定時において、他人(申立人等)の業務に係る役務であることを表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
(2)本件商標と引用商標の類否について
ア まず、本件商標と引用商標1との類否
本件商標はその構成中「本店」の文字が飲食業界において一般に自己が行う複数の店舗を区別するために用いられている語であって自他役務識別標識としての機能がないか、極めて弱いものであるから、「景徳鎮」の文字が独立して自他役務識別標識としての機能を果たし得るものといえる。
そうすると、本件商標の構成中「景徳鎮」の文字は引用商標1と同一であるから、本件商標と引用商標1とは同一又は類似の商標というべきものである。
イ 次に、本件商標と引用商標2との類否
両者は、いずれも「景徳鎮本店」の文字からなるものであるから、同一又は類似の商標であること明らかである。
(3)商標法第4条第1項第10号及び同第15号について
前記のとおり、引用商標の周知著名性は認められない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当するものといえない。
(4)商標法第4条第1項第7号及び同第19号について
前記のとおり、引用商標の周知著名性は認められない。
そうすると、本件商標は、引用商標の周知著名性にただ乗りする等、不正の目的をもって使用をするものということはできない。
また、仮に、申立人の主張のとおり、商標権者は、申立人が経営する「景徳鎮」の元従業員が経営に関与する法人であり、かつ、商標権者が「景徳鎮 新館」の経営主体と実質的に同一であるとしても、商標権者に係る当該店舗名に関しては、「景徳鎮」の名称を要部として、本件商標の登録出願前である平成21年10月頃から使用しており、同店は、申立人の店舗の近隣において、これまで継続して併存していること、及び、申立人が経営する「景徳鎮」は、一部情報誌には「景徳鎮本店」と紹介されているとしても、申立人自身が、店舗名として「景徳鎮本店」の名称を使用している事実を確認できないこと等からすれば、両者が、近隣で飲食店を営む関係であったとしても、商標権者による本件商標の登録出願の経緯が、著しく社会的妥当性を欠くものということはできない。
その他、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある、又は、商標権者が不正の目的を持って本件商標を使用するものであると認めるに足りる証拠は見いだせない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第19号に該当するものといえない。
(5)商標法第3条第1項柱書きについて
商標法第3条第1項柱書の「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」とは、少なくとも登録査定時において、現に自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標、あるいは将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標と解される(知財高裁 平成24(行ケ)第10019号)。
そして、商標権者は、申立人が主張するように、平成21年頃から本件商標の指定役務に含まれる「四川料理等の中華料理の提供」を行っているのであるから、商標権者が本件商標を将来使用する意思があることを否定することはできない。
よって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないものといえない。
◆コメント:
商標権者は、申立人が経営する「景徳鎮」の元従業員が経営に関与する法人であるようである。
しかし、商標法第4条第1項第19号においては、このような事情は特段の場合を除き参酌しないのがこれまでの例であり本異議決定でも概ね参酌していない。
妥当な審決であったと考える。