◆対象商標:
「4KJEEP」
◆指定商品役務
第9類「光波長分割多重化技術を用いた通信ネットワークにおける広帯域接続を可能にする光ファイバー伝送装置,信号伝送装置」
◆種別と異議申立番号:
異議の決定
異議2017-900154
◆異議決定日:
2017/12/18
◆関連条文:
商標法第4条第1項第11号
◆引用商標
登録第2362272号商標 「JEEP」
登録第5922653号商標の商標登録を取り消す。
◆理由:
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)指定商品の類否
本件商標の指定商品は、引用商標1の指定商品中の「電気通信機械器具」の範疇に含まれる商品である。
よって、本件商標の指定商品は、引用商標1の指定商品と同一又は類似の商品である。
(2)商標の類否
ア 本件商標について
本件商標中の「4K」の文字部分は、その指定商品について使用した場合には、「フルハイビジョンの4倍の解像度をもつ商品」などの意味合いをもって、商品の品質、機能等を表示したものと認識されるにすぎないものであって、自他商品の識別機能を有しないものということができる。
一方、本件商標中の「JEEP」の文字部分は、「第二次世界大戦中にアメリカ陸軍の要請により開発された四輪駆動小型車で、戦後は、米国以外の国でも軍用、民生用として生産され、四輪駆動車の代名詞となっている」もので、たとえ我が国における電気通信機械器具の需要者であっても、「JEEP」の文字が、いずれの者の業務に係るものか正確には知らないまでも、「四輪駆動小型車の一つ」を表するものであることについては、よく知られているといえる。
そうとすれば、本件商標は、その構成中の「JEEP」の文字部分が、取引者・需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められることから、「JEEP」の文字部分を要部として取り出し、これと他人の商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも、許されると解するのが相当である。
これより、
称呼:
「ヨンケージープ」、「フォーケージープ」、「ジープ」
観念:
「四輪駆動小型車の一つ」
となる。
イ 引用商標について
称呼:
「ジープ」
観念:
「四輪駆動小型車の一つ」
ウ 本件商標と引用商標との対比
(ア)外観
本件商標は、前記のとおり、「JEEP」の文字部分が取引者・需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部であって、この「JEEP」の文字部分は、引用商標とその書体において近似し、かつ、綴りを同じくするものである。
したがって、本件商標の要部と引用商標1は、外観上相紛らわしく、類似する商標と認める。
(イ)称呼
本件商標は、その構成中の要部である「JEEP」の文字部分より「ジープ」の称呼を生ずるものであって、引用商標より生ずる「ジープ」の称呼と共通するものである。
したがって、本件商標と引用商標1は、称呼上類似する商標と認める。
(ウ)観念
本件商標の要部である「JEEP」の文字部分と引用商標は、いずれも「四輪駆動小型車の一つ」の観念を生ずるものであるから、観念上類似する商標と認める。
(エ)したがって、本件商標と引用商標1は、外観、称呼及び観念のいずれの点についても、相紛れるおそれのある類似の商標といわなければならない。
ウ 小括
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 商標権者の主張について
商標権者は、本件商標構成文字の間隔は、「K」と「J」との間隔が最も狭いこと、「4KJ」の部分が「4000ジュール」を意味し、「EEP」の部分は、Electrical Evoked Potential(電気的誘発電位)の略語を意味することから、本件商標は、「4K」と「JEEP」と分けるのではなく、「4KJ」と「EEP」とで分けるのが自然である旨主張する。
しかしながら、本件商標構成文字におけるそれぞれの文字間の間隔の差は、これに接した需要者が明確に認識することができないほどの微差にすぎない。そして、その構成中の「K」の文字と「J」の文字は、その字形から両文字間の空白が多く、やや間隔があるように看取される場合があることに加え、本件商標の指定商品が属する電気通信機械器具の商取引における「4K」の文字の使用の実情及び「JEEP」の文字部分の著名性を考慮すれば、本件商標の構成中、「JEEP」の文字部分が、取引者・需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えることから、該文字部分を要部として取り出し、これと他人の商標とを比較して商標そのものの類否を判断することが許されることは上述のとおりであるから、商標権者の主張は採用できない。
◆コメント:
筆者にとっては、予想外の判断であった。
「K」と「J」の文字間隔もさほど空いているようには見えず、筆者から見ると一連一体の商標としか見えず、「JEEP」を要部に認定したのは意外であった。
ただ、このように判断した理由は「JEEP」の文字があまりにも「四輪駆動小型車の一つ」としてあまりにもよく知られているからであろう。
とはいえ、本件商標は何度見ても「JEEP」を分離して看取されるとは思えないが、いかがだろうか。