◆対象商標:
「nanoMisty Pro」
◆指定商品役務
第11類「化粧水・美容液を微細なミスト状にする美容用の家庭用電熱用品類,美容院用又は理髪店用の機械器具(「椅子」を除く。)」
◆種別と審判番号:
拒絶査定不服の審決
不服2017-8532
◆審決日:
2018/01/22
◆関連条文:
商標法第4条第1項第11号
◆引用商標:
登録第5484104号商標 「ナノミスティ\NANO MISTY」
本件審判の請求は、成り立たない。
◆理由:
(1)商標の類否判断について
商標法第4条第1項第11号に係る商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に、当該商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、そのためには、両商標の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合し、当該商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきである(最高裁昭和39年(行ツ)第110号参照)。
この点に関し、図形や文字等の複数の構成部分を組み合わせた結合商標については、経験則上、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない場合、取引の実際において、一部の構成部分のみによって称呼、観念されることも少なくないといえる。このことから、結合商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などは、当該構成部分を要部として抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標の類否を判断することができるものである(最高裁昭和37年(オ)第953号、最高裁平成3年(行ツ)第103号、最高裁平成19年(行ヒ)第223号参照)。
上記の観点から、本願商標と引用商標との類否について判断する。
(2)本願商標
本願商標の構成中の「nanoMisty」は、「10億分の1」を意味する「nano」及び「霧の(深い)、ぼんやりとした」等の意味を有する「Misty」の文字を組み合わせたものといえるが、これらが広く一般に親しまれた平易な英語であるとはいえず、また、この文字が、本願商標の指定商品を取り扱う業界において、商品の品質等を表すものといえる実情も見いだせないから、全体として直ちに特定の意味合いを想起させるものとはいえない。
一方、本願商標の構成中の「Pro」の文字部分は、「プロ(の)、専門家(の)。professionalを短くした形。」の意味を有する広く一般に親しまれた平易な英語であり、また、本願商標の指定商品を取り扱う業界においては、「専門家用の商品」、「専門家用の商品と同等の高い品質を有する」ほどの意味合いにおいて、商品の内容や品質の誇称表示として使用されているものであるから、当該文字部分は、商品の出所識別標識として機能しないか又はその機能は極めて弱いものといえる。
してみれば、本願商標は、その構成中の「nanoMisty」と「Pro」の文字部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められず、かつ、「nanoMisty」の文字部分が、取引者、需要者に対し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものというべきであるから、本願商標は、その構成中の「nanoMisty」の文字部分を要部として抽出し、この部分のみを他人の商標(引用商標)と比較して商標の類否を判断することができるものである。
したがって、本願商標からは、構成全体から生じる「ナノミスティプロ」の称呼のほか、要部である「nanoMisty」の文字部分から「ナノミスティ」の称呼が生じ、特定の観念は生じないというのが相当である。
(3)引用商標
引用商標は、「ナノミスティ」の片仮名と「NANO MISTY」の欧文字を上下二段に併記してなるものであるから、引用商標からは、「ナノミスティ」の称呼が生じ、特定の観念は生じないというのが相当である。
(4)本願商標と引用商標の類否
本願商標の要部と引用商標とを対比すると、外観においては、片仮名の有無、欧文字部分のスペースの有無及び欧文字部分の大文字小文字の差異があるものの、両者は共に態様上の特徴が認められない普通の書体で表されていることに加え、本願商標の要部と引用商標の欧文字部分のつづりが共通であることに鑑みれば、両者における上記相違が、看者に対し、出所識別標識としての外観上の顕著な差違として強い印象を与えるとはいえない。
そして、称呼においては、両者は、「ナノミスティ」の称呼を共通にする。
また、観念においては、両者は共に特定の観念を生じないものであるため、両者を比較することができず、観念によって区別することはできない。
そうすると、本願商標の要部と引用商標は、「ナノミスティ」の称呼を共通にし、その外観において、称呼の共通性を凌駕するほどの顕著な差異があるとはいえず、また、観念によって区別できるものではないことから、これらの外観、称呼及び観念によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合勘案すれば、両者は、相紛れるおそれのある類似するものというべきである。したがって、本願商標と引用商標は、類似する商標であるというのが相当である。
そして、本願商標と引用商標の指定商品は類似するものである。
(5)小括
これより、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
◆コメント
近年の結合商標の審決では、その多くが一体不可分であるとの判断であった。
そのため、まずは前段で結合商標に関する最高裁判決を提示している。
本審決においては、結合している文字が、識別力のある語(「nanoMisty」)と識別力のない語(「Pro」)であり、識別力のある語を要部と認定したのは妥当な判断であったと考える。
なお、請求人は「nanoMisty」ついて識別力が弱い語である旨の主張をしている。
微妙なところではあるが、商品の質等を表す語として使用されているという証拠もなく、識別力が弱い語として認定するのは難しいであろう。