◆対象商標:
「V&W」
第35類「畳類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」等
◆種別と審判番号:
異議の決定
異議2017-900009
◆審決日:
2017/07/04
◆関連条文:
商標法第3条柱書
商標法第4条第1項第11号
商標法第4条第1項第15号
商標法第8条第1項
◆引用商標:
(1)登録第4445299号の2商標 図形商標(「フォルクスワーゲン」のハウスマーク)
(2)国際登録第807803号商標 図形商標(「フォルクスワーゲン」のハウスマーク)
(3)国際登録第1272004号商標 「VW」
(4)国際登録第1270484号商標 図形商標(「フォルクスワーゲン」のハウスマーク)
なお、引用商標1、引用商標2及び引用商標4に係る商標権はいずれも現に有効に存続し、引用商標3に係る出願は現在審査に係属しているものである。
引用商標1ないし引用商標4をまとめて「引用商標」という。
また、申立人が引用する標章は,同人の製造販売する自動車及び商号として使用している「VW」の欧文字からなるものである(以下「引用標章」という。)。
<本商標が上記条文に該当するか結果と理由をみる>
◆結論:
登録第5888513号商標の商標登録を維持する。
◆理由:
1 引用商標及び引用標章の周知性について
(1)申立人提出の甲各号証及び同人の主張について
引用商標1及び引用商標2は、本件商標の登録出願の日前ないし登録査定日において、申立人(自動車の製造販売をしているドイツの企業「フォルクスワーゲン」)商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であり、引用商標3及び引用標章は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、あるいは申立人及び申立人商品の略称として需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものである。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
称呼:「ブイアンドダブリュー」
観念:特定の観念を生じない
なお、申立人は、本件商標は「ブイダブリュウ」の称呼、「申立人の名前の略称として需要者の間に広く認識されているVW」の観念が生ずる旨主張しているが、本件商標の構成文字は、標準文字により、同書、同大、同間隔で、まとまりよく一体に表され、該文字から生じる「ブイアンドダブリュー」の称呼も格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼しうる。
さらに、上記のとおり、「VW」の文字は、申立人の略称として需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
よって、本件商標は、「ブイアンドダブリュー」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものというのが相当であるから、申立人のかかる主張は、採用できない。
(2)引用商標1及び引用商標2について
ア 引用商標1について
称呼:特定の称呼を生じないものである。
観念:申立人のハウスマークの観念を生じる。
なお、申立人は、引用商標1は「ブイダブリュウ」の称呼、「申立人の名前の略称として需要者の間に広く認識されているVW」の観念が生ずる旨を主張している。
しかし、仮に、引用商標1が「V」と「W」の文字をロゴ化したものであるとしても、かかる構成においては、需要者をして「V」と「W」の文字を理解、認識させるというより、一種の幾何図形として理解、認識させると判断するのが相当であり、また、引用商標1が「ブイダブリュウ」と称呼されている証左も見いだせない。
イ 引用商標2について
称呼:特定の称呼を生じないものである。
観念:申立人のハウスマークの観念を生じる。
(3)本件商標と引用商標1及び引用商標2の類否について
外観:
相紛れるおそれはない。
称呼:
本件商標は、「ブイアンドダブリュー」の称呼を生じ、引用商標1及び引用商標2は、特定の称呼を生じないものであるから、称呼上、相紛れるおそれはない。
観念:
観念上、比較することができない。
よって、本件商標と引用商標1及び引用商標2は、外観及び称呼において相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものであり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標1、引用商標2及び引用標章の周知性について
上記のとおり、引用商標1及び引用商標2の周知性は認められるが、引用標章の周知性は認められない。
(2)本件商標と引用商標1及び引用商標2の類否について
上記のとおり、本件商標と引用商標1及び引用商標2は、別異の商標である。
(3)本件商標と引用標章の類否について
外観:
本件商標「V&W」と、引用標章「VW」とは、文字数が、2文字又は3文字という少ない文字構成における「&」の記号の有無は、外観における顕著な差異として印象付けられるものであり、外観上、相紛れるおそれはない。
称呼:
本件商標「V&W」は、「ブイアンドダブリュー」の称呼を生じる。
引用標章「VW」は、一般に欧文字2字を普通に用いられる方法で表したものは、自他商品識別力を有さず出所識別標識としての称呼を生じないといえることから、引用標章からは、特定の称呼は生じないとみるべきである。
よって、両者は、称呼上、相紛れるおそれはない。
観念:
観念上、両者を比較することができない。
これより、本件商標と引用標章は、外観及び称呼において相紛れるおそれのない非類似の商標(標章)であって、別異の商標(標章)というべきものである。
(4)本件商標と引用商標1、引用商標2及び引用標章の出所の混同について
上記のとおり、引用商標1及び引用商標2の周知性は認められるが、引用標章の周知性は認められない。
そして、本件商標と引用商標1、引用商標2及び引用標章は相紛れるおそれのない非類似の商標(標章)であって、まったく別異の商標(標章)というべきものであるから、引用商標1、引用商標2及び引用標章の著名性の有無にかかわらず、本件商標は、これに接する取引者、需要者が、引用商標1、引用商標2及び引用標章を連想又は想起するものということはできない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第8条第1項該当性について
(1)本件商標と引用商標3について
本件商標と引用商標3は、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において紛れるおそれのない非類似の商標である。
(2)本件商標と引用商標4について
本件商標と引用商標4は、観念においては比較できないとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれのない非類似の商標である。
よって、本件商標は、商標法第8条第1項に該当しない。
5 商標法第3条柱書について
申立人は、申立ての理由の要約に「商標法第3条柱書」と記載しているが、申立ての根拠及び具体的理由には何らそれに係る記載及び主張がなく、申立ての具体的理由は不明であって、本件商標が商標法第3条柱書に違反しているというべき事情は見いだせない。
よって、本件商標は、商標法第3条柱書の要件を具備するものである。
◆コメント
筆者の主観ではあるが「&」は「V」や「W」などの英文字に比べて存在感があるように感じる。
よって、本件商標「V&W」が「ブイダブリュウ」と称呼されることもまずないであろう。
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