◆対象商標:
「いつでも、どこでも、何にでも」
◆指定商品役務:
第36類「食事券の発行」
◆種別と審判番号:
拒絶査定不服の審決
不服2013-22500
◆審決日:
2015/11/06
◆関連条文:
商標法第3条第1項第6号
本件審判の請求は、成り立たない。
◆理由:
(1)商標法第3条第1項第6号該当性について
本願商標の構成中の「いつでも」、「どこでも」及び「何にでも」の文字は、それぞれ「どのような時でも」、「どのような所でも」及び「どのようなものにでも」程の意味合いを表す平易な日常語である。
また 、本願商標の指定役務は、「食事券の発行」であるところ、「食事券」は「飲食店などで飲食代として使用できる金券のこと。」を意味する語であるから、「食事券」は「前払式証票」(プリペード-カードや商品券のように、あらかじめ金銭を支払い、物品の給付等を受けることのできるカード・証票等で、乗車券・入場券等以外のもの。の一種と認められる。
そして、前払式証票は、利用可能な金額、利用可能な場所(加盟店等)等の条件があるもので、このことは、前払式証票の一種である食事券にも当てはまるものである。
してみれば 、食事券は、あらかじめ金額を支払い、券面等に記載された条件の範囲内で、飲食物の提供を受けることが約束された証票(金券)であるから、「食事券の発行」の役務は、食事券の発行者が、取引者・需要者に対し、食事券に化体された上記条件や約束を履行・享受させる役務を提供することというべきである。
そして、前払式証票を取り扱う業界においては、「いつでも」「どこでも」「何にでも」の文字を、当該前払式証票が、その加盟店、額面に記載の金額等の制限の範囲において、時・所・対象を問わず広く使用できる程の意味合いで、提供する役務の制限が少ない又は役務の範囲が広いこと、すなわち、役務の利便性や訴求点を、当該前払式証票の利用者に対して端的にイメージさせるための標語(キャッチフレーズ、スローガン)として使用している実情が認められる。
以上に鑑みれば、本願商標の指定役務「食事券の発行」は、加盟店の範囲が飲食店に限定された「前払式証票の発行」にほかならない。
これより、本願商標「いつでも、どこでも、何にでも」を、その指定役務について使用すると、これに接した需要者(加盟の飲食店関係者及び一般消費者と認められる。)は、券面に記載の金額等の制限の範囲において「どんな時でも、どんな所でも、どのようなもの(飲食物)にでも」使用できる食事券を提供するといった、提供する役務の制限が少ない又は役務の範囲が広いこと、すなわち、役務の利便性や同業他社に対する自社の訴求点を端的にイメージさせるための標語(キャッチフレーズ、スローガン)として認識、理解するにとどまるというべきである。
また、本願商標の態様は、顕著な特徴は認められない。
そうすると、本願商標は、役務の出所識別標識としては機能しないというのが相当である。
してみれば、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標であるといわざるを得ない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。
◆コメント:
本審決は、キャッチフレーズに関する商標審査基準が改正される前になされたものである。
商標審査基準が改正された後に判断がくだされたとしたら、その帰趨も別のものとなっていたであろう。