◆対象商標:
「ノンマルチビタミン」
第5類「サプリメント」
◆種別と審判番号:
拒絶査定不服の審決
不服2014-15917
◆審決日:
2015/04/21
◆関連条文:
商標法第3条第1項第3号
商標法第4条第1項第16号
本件審判の請求は、成り立たない。
◆理由:
(1)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号の該当性について
本願商標の「ノン」の文字は、「非、無、不、などの意味を表す。」ものである。
また、本願の指定商品を取り扱う分野において、「フレーバーを含まない」ものを「ノンフレーバー」、「砂糖を含まない」ものを「ノンシュガー」、「カフェインを含まない」ものを「ノンカフェイン」のように使用している事実があることから、「ノン」の文字は、「〇〇を含まないこと」程の意味合いで親しまれた語であるといい得る。
さらに、本願商標の「マルチビタミン」の文字は、「ビタミンCやビタミンB群など、複数のビタミンを含むサプリメントのこと。総合ビタミン剤ともいう。」の意味を有するものである。
そして、複数のビタミンを含むサプリメントが、「マルチビタミン」と指称され、販売されている実情がある。
加えて、本願の指定商品を取り扱う業界においては、「マルチビタミンからなるサプリメント」及び「マルチビタミン以外の栄養素からなるサプリメント」以外に、例えば、「マルチビタミン&ミネラル」、「鉄×マルチビタミン」、「カルシウム×マグネシウム+マルチビタミン」のように、「マルチビタミン」と「マルチビタミン」以外の栄養素とを組み合わせた「マルチビタミン入りのサプリメント」が販売されている実情がある。
そうしてみると、本願商標をその指定商品中、「複数のビタミンを含まないサプリメント」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、「複数のビタミンを含まない商品」であること、すなわち、単に商品の品質を表示したものと認識、理解するにとどまり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものとは認識し得ないものというべきであり、かつ、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものと判断するのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
◆コメント:
請求人は、「ノンマルチ」と「ビタミン」の語に分離観察されるとみるのが自然である旨主張したが、審判官は指定商品における業界での取引実情から、本願商標は、これをその指定商品中「複数のビタミンを含まないサプリメント」に使用したときは、商品の品質を表したものと認識されるものであり、自他商品の識別標識としての機能を果たすものということはできないとして、請求人の主張を斥けた。
筆者の個人的な見解ではあるが、本願商標「マルチビタミン」は、商品の品質を直接的かつ具体的に表していないのではないかと考える。
なお、本審決後、請求人が審決取消訴訟を提訴したが、知財高裁でも同じ判断であった。
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/397/085397_hanrei.pdf
審決公報はここをクリック。[/read]