◆対象商標:
「オルガノサイエンス」
◆指定商品役務
第1類「芳香族有機化合物,脂肪族有機化合物,有機ハロゲン化物,アルコール類,フェノール類,エーテル類,アルデヒド類及びケトン類,有機酸及びその塩類,エステル類,窒素化合物,異節環状化合物,有機リン化合物,有機金属化合物,化学剤,原料プラスチック,有機半導体化合物,導電性有機化合物」
第40類「有機化合物・化学品・原料プラスチックの合成及び加工処理」
◆種別と審判番号:
無効の審決
無効2014-890019
◆審決日:
2016/07/20
◆関連条文:
商標法第4条第1項第11号
商標法第4条第1項第15号
◆引用商標
登録第1490119号商標 「オルガノ」
登録第5325691号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
◆理由:
1 引用商標及び使用商標の周知著名性について
(請求人提出の証拠等から、請求人は、「オルガノ」と略称されて水処理装置事業の分野において広く知られており、また、使用商標は、純水製造装置、超純水製造装置、排水処理装置等の商品を含む水処理関連事業について使用する請求人の商標として、本件商標の登録出願時には既に、取引者、需要者の間に広く認識されていたものというべきであり、その状態は本件商標の登録審決時においても継続していたものといえる。
また、請求人の事業は水処理関連事業であるが、これには薬品事業が伴うものと認識されていたものと認められ、引用商標についても、本件商標の登録審決時において、その指定商品「界面活性剤,化学剤」を示すものとして相当程度周知となっていたことが認められる。
2 無効理由1(商標法第4条第1項第11号該当性)について
(1)
引用商標の周知性からすれば、本件商標のうち「オルガノ」部分は、その指定商品及び指定役務の取引者、需要者に対し、商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められ、他方、「サイエンス」は、一般に知られている「科学」を意味し、指定商品である化合物、薬品との関係で、出所識別標識としての称呼、観念が生じにくいと認められる。
したがって、本件商標については、前半の「オルガノ」部分がその要部と解すべきである。
(2)本件商標の要部「オルガノ」と、引用商標とは、外観において類似し、称呼を共通にし、一般には十分浸透しているとはいえないものの、いずれも「有機の」という観念を有しているものと認められる。したがって、両者は、類似していると認められる。
(3)本件商標の指定商品と、引用商標の指定商品とは、いずれも「化学剤」を含んでいる点で共通している。
(4)よって、本件商標と引用商標とは類似し、両商標の指定商品中にはいずれも「化学剤」を含んでいることから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
3 無効理由2(商標法第4条第1項第15号違反)について
(1)使用商標の独創性の程度
「オルガノ」を「有機」の意味で使用することがあるとしても、本件商標の登録出願時に「有機」の意味での使用が一般に浸透していたとは認められない。また、「オルガノ」の片仮名は、日本語の辞書には掲載されていない。
これより、「オルガノ」の文字は、独創性の程度が低いとまではいえないものである。
(2)請求人の多角経営
請求人は、総合水処理エンジニアリング会社として水処理装置事業と薬品事業を主として行っており、さらに、工業薬品類の販売、水処理機器類の販売、食品素材・添加物、栄養補助食品等の開発・製造販売、工場排水処理設備の製造販売を行っている多数の子会社、孫会社を設立し、多角的に事業運営を行っていることが認められる。
(3)商品間又は役務と商品の関連性
請求人に係る商品又は役務と、本件商標の指定商品及び指定役務は、いずれも化学に関する技術を活かした商品及び役務である点で一致しており、特に、請求人の製造・販売する薬品は、本件商標の指定商品である様々な種類の有機化合物を混合することにより得られるものであるから、両者は密接不可分に関連しているといえる。
(4)需要者及び取引者の共通性
請求人の事業の需要者、取引者は、用水製造や排水処理等の水処理プラント又は中・小型装置、水処理薬品等の化学剤等を必要とする各種製造業、サービス業、発電所、国の機関・自治体、一般消費者等であるのに対し、本件商標の指定商品の需要者は、指定商品である化合物を製品原料などとして必要とする各種製造業者である。そして、化合物を原料などとして必要としている製造業者は、水処理設備又は水処理装置、水処理用化学剤を必要とする製造業者でもある。
したがって、請求人の事業の需要者、取引者と、本件商標の需要者、取引者とは、その多くが共通しているといえる。
(6)本件商標と使用商標との類似性の程度
本件商標のうち「オルガノ」の文字部分は、その指定商品及び指定役務の取引者、需要者に対し、商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められ、他方、「サイエンス」の文字は、一般に知られている「科学」を意味し、指定商品であり、役務の合成や加工対象である化合物、薬品との関係で、出所識別標識としての称呼、観念が生じにくいと認められ、本件商標については、前半の「オルガノ」の文字部分がその要部と解すべきである。
そうすると、本件商標の要部「オルガノ」の文字と、使用商標とは、外観において類似し、称呼を共通にし、一般には十分浸透しているとはいえないものの、いずれも「有機の」という観念を有しているものと認められる。
したがって、両者は、類似していると認められる。
(7)小括
よって、本件商標をその指定商品及び指定役務中の「化学剤」以外の指定商品及び指定役務について使用する場合には、その需要者や取引者において、その商品又は役務が、請求人又はこれらと経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのように、商品又は役務の出所について混同を生じさせるおそれがある。
これより、本件商標は、その指定商品及び指定役務中の「化学剤」以外の指定商品及び指定役務について、商標法第4条第1項第15号に該当する。
◆コメント:
妥当な審決であったと考える。