◆対象商標:
「3Mシステム\3MSYSTEM\スリーエムシステム」
◆指定商品役務:
第35類「コンタクトレンズ及びその附属品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」等
◆種別と異議申立番号:
異議の決定
異議2017-900111
◆異議決定日:
2017/09/15
◆関連条文:
商標法第4条第1項第8号
商標法第4条第1項第11号
商標法第4条第1項第15号
◆引用商標:
1) 引用商標
登録第4534709号商標 「3M THREE-M」
2) 使用商標
「3M」又は「スリーエム」
登録第5909616号商標の商標登録を維持する。
◆理由:
1 使用商標の著名性について
申立人の提出した証拠等から、申立人が世界的な企業であり、使用商標がコンタクトレンズの従事者向け商品に使用されていることが窺えるとしても、本件商標の登録出願の時に、使用商標が、本件商標の指定役務の分野においても周知著名といえる程度にまで取引者、需要者間に広く認識されていたとはいえない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標の「3M(スリーエム)」及び「システム(SYSTEM)」が、それぞれ単独では自他役務の識別力がないか極めて弱いものであり、両文字を比較しても、識別力について軽重の差は認められないから、その構成全体をもって一連一体の造語を表すものとして認識されるものであって、「スリーエムシステム」の称呼を生ずることはあっても、「スリーエム」又は「システム」の称呼を生ずることはない。
(2)引用商標について
引用商標は、「3M」の文字と一文字程度の間隔を空けて、その右に「THREE-M」の欧文字からなるところ、その構成中の「THREE-M」の欧文字は、「3M」の文字部分の「3」の数字を英語に置き換えたものと無理なく認識し得るから、欧文字部分より生ずる称呼がその商標の自然な称呼とみるのが相当である。
これより、
称呼:
「スリーエム」
観念:
特定の観念を生じない。
なお、申立人は、「3M」の語は、申立人の業務に係る商品等を表示するものとして広く知られている旨を主張しているが、数字や欧文字は、情報等を伝えるための記号(手段)にすぎず、それだけでは特定の意味を有するものではないから、特定の数字、文字のみを指すことをもって、観念が生じると解することはできない。
(3)本件商標と引用商標の類否について
外観:
明確に区別できる。
称呼:
明瞭に聴別することができる。
観念:
観念上、両者を比較することはできない。
これより、 本件商標と引用商標とは非類似の商標であり、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)使用商標の著名性について
使用商標は、前記のとおり、本件商標の指定役務の分野においても周知著名といえる程度にまで取引者、需要者の間に広く認識されていたとはいえない。
(2)本件商標と使用商標の類否について
外観:
明確に区別できる。
称呼:
明瞭に聴別することができる。
観念:
観念上、両者を比較することはできない。
これより、本件商標と使用商標とは、非類似の商標であり、本件商標をその指定役務について使用した場合に、これに接する取引者、需要者をして、使用商標を連想又は想起させるものとは認められず、その役務が申立人又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかの如く、その役務の出所について混同を生じさせるおそれはない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第8号該当性について
使用商標は、前記のとおり、申立人又は申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願前より、我が国の取引者及び需要者の間に広く認識されているとしても、本件商標の指定役務の分野においても周知著名といえる程度にまで取引者、需要者の間に広く認識されていたとはいえない。
そして、本件商標は、その構成全体をもって一連一体の造語を形成するものとして認識されるものであり、構成中の「3M」の文字は、普通に用いられる方法で表示する態様からして、単に、商品や役務の形式、規格、品番、種類等を表示するための記号、符号として類型的に採択、使用される数字とローマ字1字の組み合わせの一つとして認識されるにとどまるものであるから、申立人の著名な略称を含む商標ということはできない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
◆コメント
本審決のポイントは、本件商標の指定役務の分野において使用商標の周知著名性が認められなかったことにつきるだろう。
申立人は世界的にも著名な企業であり、やや疑問の残る審決であった。