◆対象商標:
「ボーテ・ド・ココ」
◆指定商品役務
第3類「オーデコロン・香水及び化粧品,せっけん類及び歯磨き,清浄用及び保湿用のクリーム・オイル・ローション」
◆種別と異議申立番号:
異議の決定
異議2017-900067
◆異議決定日:
2017/12/05
◆関連条文:
商標法第4条第1項第11号
◆引用商標:
1 登録第2704127号商標 「COCO」
2 登録第520006号商標 「Co Co\コ コ」
3 登録第4492799号商標 「COCO MADEMOISELLE」
4 国際登録第1108062号商標 「COCO NOIR」
登録第5899095号商標の商標登録を取り消す。
◆理由:
1 申立人商標の著名性について
申立人提出の証拠等によると、申立人商標は、申立人商品を表示するものとして、本件商標の登録出願日前より、香水の分野の取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認められ、その著名性は、本件商標の登録査定日においても継続していたものと認めることができる。
2 商標の類否判断
商標法第4条第1項第11号に係る商標の類否は、同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が、その外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであり、かつ、その商品又は役務に係る取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする(最高裁昭和39年(行ツ)第110号、同43年2月27日第三小法廷判決)。
そして、複数の構成部分を組み合わせた結合商標については、商標の各構成部分がそれぞれ分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められる場合において、その構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、原則として許されない。
他方、商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などには、商標の構成部分の一部だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも、許されるものである(最高裁昭和37年(オ)第953号、同38年12月5日第一小法廷判決、最高裁平成3年(行ツ)第103号、同5年9月10日第二小法廷判決、最高裁平成19年(行ヒ)第223号、同20年9月8日第二小法廷判決)。
以上を踏まえて、本件商標と引用商標との類否について判断する。
3 本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標「ボーテ・ド・ココ」は、その指定商品を「オーデコロン・香水及び化粧品,せっけん類及び歯磨き,清浄用及び保湿用のクリーム・オイル・ローション」とするものである。
構成中の「ボーテ」は、香水、化粧品等の分野において、商標や商品に関する表示に多用されるフランス語で、「美、美しさ」等を意味する「Beaute(最後の「e」にアクサンテギュがある。)」の読み仮名であり、「ド」の文字部分も「から、の」を意味する前置詞「de」の読み仮名であって、化粧品等の分野においては、これらの語は、普通に使用されているものである。
そうすると、本件商標をその指定商品について使用するときは、「ボーテ・ド」の文字部分は、上記意味合いを取引者、需要者に認識、理解させるとみるのが相当であるから、自他商品の識別機能を有しないか、あるいは、有するとしても極めて弱いものといわなければならない。
構成中の「ココ」は、本件商標の登録出願日には既に、申立人商品を表示するものとして、我が国の香水を取り扱う分野の取引者、需要者の間に広く認識されていた申立人商標のうち、「ココ」と同一の綴り文字からなり、また、これより生ずる「ココ」の称呼も同一であることからすれば、本件商標をその指定商品について使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「ココ」の文字部分に強く印象付けられ、当該商品が申立人商品とその生産者、販売者を同じくする商品であると想起又は連想する場合も決して少なくないものとみるのが相当である。
これより、本件商標は、これを常に構成全体をもって一体不可分の商標を表したと把握、認識されるものではなく、強く支配的な印象を与える「ココ」の文字部分より、単に「ココ」の称呼をも生ずるものといわなければならない。
また、該「ココ」の文字部分は、申立人商品を表示するものとして著名であるから、申立人の著名ブランドとしての「COCO」又は「ココ」の観念を生ずるものである。
よって、
称呼;
「ココ」の称呼をも生じる。
観念:
申立人の著名ブランドとしての「COCO」又は「ココ」の観念を生ずる。
となる。
(2)引用商標
引用商標1
称呼:
「ココ」
観念:
申立人の著名ブランドとしての「COCO」又は「ココ」の観念を生ずる。
引用商標2
称呼:
「ココ」
観念:
申立人の著名ブランドとしての「COCO」又は「ココ」の観念を生ずる。
引用商標3
称呼:
「ココマドマゼル」及び「ココ」
観念:
申立人の著名ブランドとしての「COCO」又は「ココ」の観念を生ずる。
引用商標4
称呼:
「ココノワール」及び「ココ」
観念:
申立人の著名ブランドとしての「COCO」又は「ココ」の観念を生ずる。
(3)本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標2とは、外観上類似し、称呼及び観念を同一にするものであり、本件商標と引用商標1、3及び4とは、外観において異なるとしても、称呼及び観念を同一にするものであるから、本件商標と引用商標は、相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
(4)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品との類否
本件商標の指定商品と引用商標の指定商品は、同一又は類似の商品である。
(5)小括
これより、本件商標は、引用商標と類似する商標であって、引用商標の指定商品と同一又は類似する商品に使用をするものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
◆コメント
本審決のポイントは、本件商標の要部が「ココ」であると認定されたことである。
要部が「ココ」と認定された理由は、何より「ココ」が化粧等の商品において著名だったことにある。
仮に、「ポーテ・ド・○○」の○○部分が、著名なものでなければ、このような判断はされなかったであろう。
であるなら、商標法第4条第1項第11号を適用するのではなく、商標法第4条第1項第15号あたりで適用すればよかったのではないかと疑問も残る。
一部、疑問点は残るが、総論としては妥当な審決であったと考える。