◆対象商標:
「シャンパンいちご大福」(図案化、詳細は公報参照)
◆指定商品役務:
第30類「シャンパーニュ地方で作られた発泡性ワイン入りのいちごを使用した大福」
◆種別と審判番号:
拒絶査定不服の審決
不服2015-11193
◆審決日:
2016/01/18
◆関連条文:
商標法第4条第1項第7号
◆結論:
本件審判の請求は、成り立たない。
◆理由:
(1)本願商標について
本願商標は、「パ」の文字の半濁点の部分が小さなイチゴの図形よりなる「シャンパンいちご大福」の文字と、その右側にワインクーラー状の容器に瓶を斜めに傾けて入れたとおぼしき図形(以下「ワインクーラー状図形」という。)を配してなり、商標全体をあずき色に、イチゴの図形のヘタの部分のみが黄緑色に着色されているものである。
そして、本願商標の文字部分とワインクーラー状図形部分とは、称呼及び観念上のつながりも見いだせず、これらを分離して観察することが取引上不自然と考えられるほど不可分一体に結合しているということはできない。
また、文字部分については、その構成中の「シャンパン」の文字は「発泡性の白葡萄酒。厳密にはフランス北東部シャンパーニュ地方産のものを指す。」の意味を有する語として一般に親しまれた語であり、「いちご大福」の文字は「大福の中に生のイチゴを入れた創作和菓子。」の意味を有し、本願商標の指定商品との関係では商品の名称を表すものであることから自他商品識別力を有しない語である。
次に、「シャンパン」の文字は、上記のとおり、フランス北東部シャンパーニュ地方産の発泡性の白ぶどう酒として一般に親しまれているものであることに加え、生産地域、製法、生産量など所定の条件を備えたぶどう酒についてだけ使用できるフランスの原産地統制名称であること、シャンパンはフランスの法令によって規定され、その名称の使用も制限されているものであって、フランス国内外で当該名称を保護する活動が行われている。
(2)商標法第4条第1項第7号該当性について
以上から、「シャンパン」の語が「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性の白ぶどう酒」を意味するものとして我が国の一般需要者の間に広く知られているものであること並びにフランスシャンパーニュ地方のぶどう生産者・ぶどう酒製造者が永年その土地の風土を利用して優れた品質の発泡性ぶどう酒の生産に努めてきたこと及びフランスが国内法令を制定し、INAO等が中心となって原産地名称を統制、保護してきた結果、当該語よりなる表示の著名性が獲得されたものであることをも併せ考慮すれば、本願商標は、その構成中の「シャンパン」の文字部分が強く看者の印象に残るものと認められる。
これより、「シャンパン」の文字を含む本願商標をその指定商品に使用するときは、著名な「シャンパン」の表示へのただ乗り(フリーライド)及び同表示の希釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがあるばかりでなく、シャンパーニュ地方のぶどう生産者及びぶどう酒製造者はもとより国を挙げてぶどう酒の原産地名称又は原産地表示の保護に努めているフランス国民の感情を害するおそれがあるというべきである。
したがって、本願商標は、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであり、公の秩序を害するおそれがあるものと判断するのが相当である。
よって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(3)請求人の主張について
請求人は、本願商標が、実際に原材料としてシャンパンを含む「いちご大福」という指定商品に使用される場合、「シャンパン」の部分は単なる原材料表記であり、また、請求人は、実際に、シャンパンを原材料として使用した商品を販売しているから、本願商標をその指定商品に使用しても、フリーライド及びダイリューションには当たらない旨主張する。
しかしながら、仮に、本願商標の構成中の「シャンパン」が商品の原材料を表示するものと想起する場合があるとしても、上記(2)のとおり、「シャンパン」の語の著名性はフランスによる国を挙げての保護活動によるものであるから、その「シャンパン」の文字を含み、当該文字部分が強く看者の印象に残る本願商標を請求人が自己の商標として独占排他的に採択し使用することは、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであり、公の秩序を害するおそれがあるものと判断するのが相当であるから、請求人の主張を採用することはできない。
◆コメント:
妥当な審決であったと考える。