◆対象商標:
「サネイ」
◆指定商品役務:
第6類「金属製水栓柱,建築用排水口金具,金属製雨水ます,金属製手すり,水道管,金属製排水管,建築用又は構築用の金属製専用材料」
◆種別と審決番号:
拒絶査定不服の審決
不服2017-14002
◆審決日:
2017/12/05
◆関連条文:
商標法第4条第1項第11号
◆引用商標:
登録第795536号商標 「Sanei」(筆記体、詳細は公報参照)
本件審判の請求は、成り立たない。
◆理由:
(1)本願商標
称呼:
「サネイ」
観念:
特定の観念を生じない。
(2)引用商標
称呼:
「サネイ」および「サンエイ」
観念:
特定の観念は生じない。
(3)本願商標と引用商標の類否
本願商標と引用商標とは、
外観においては、片仮名及び欧文字という文字種を異にするところがあるものの、
称呼においては、本願商標と引用商標は、「サネイ」の称呼を共通にするものであり、
観念においては、両者はいずれも特定の観念を生じないから、比較することができないものである。
そして、商標の使用においては、商標の構成文字を同一の称呼を生じる範囲内で平仮名、片仮名及びローマ字等相互に変更したり、デザイン化したりすることが一般に行われている取引の実情があることに加え、特定の観念を有しない文字商標においては、観念において商標を記憶できず、称呼において記憶し、これを頼りに取引に当たることがすくなくないというのが相当である。
以上によれば、本願商標と引用商標は、その外観、称呼及び観念によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合し、上記取引の実情を考慮すると、両者の外観が相違するとしても、観念において比較できず、取引上必要な役割を果たす称呼を共通にするものであるから、商標の出所について誤認混同を生じさせるおそれのある類似の商標と判断するのが相当である。
そして、本願商標の指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似するものである。
(4)小括
以上によれば、本願商標と引用商標とは、互いに類似する商標であり、その指定商品も同一又は類似するものである。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(5)請求人の主張
請求人は、市場における取引に際し、電話や口頭で取引されるとしても、現在の市場においては、ファクシミリやネット通信など文字を介した商品の取引、購入が基本であるから、構成文字が相違する本願商標「サネイ」を付した商品と、引用商標「Sanei」が付された商品について、誤って発注、発送し、消費者が誤って購入するなど、市場における取引の実際において、混同を生じることは想定できない旨主張する。
しかしながら、商標の類否判断において参酌されるべき取引の実情とは、その指定商品全般についての一般的、恒常的なそれを指すものであって、単に該商標が現在使用されている商品についてのみの特殊的、限定的なそれを指すものではないと解される(最高裁昭和47年(行ツ)第33号・昭和49年4月25日第一小法廷判決参照)ところ、本願商標の指定商品を取り扱う業界においては、その流通経路は、ファクシミリやインターネット販売に限定されるという証左もないことからすれば、かかる点については、指定商品全般についての一般的、恒常的な取引の実情と認めることはできない。
◆コメント
疑問の残る審決である。
外観においては、片仮名と欧文字という文字種からして異なっており、明瞭に区別し得ることは議論の余地はないであろう。
よって、称呼が共通することがあっても、その点を外観の非類似が凌駕するとするのが、直近の審決傾向であり、また、商取引上も妥当な判断であると考えている。
しかし、本審決では、請求人の「現在の市場においては、ファクシミリやネット通信など文字を介した商品の取引、購入が基本であるから、構成文字が相違する本願商標「サネイ」を付した商品と、引用商標「Sanei」が付された商品について、誤って発注、発送し、消費者が誤って購入するなど、市場における取引の実際において、混同を生じることは想定できない」との主張に対して、「その流通経路は、ファクシミリやインターネット販売に限定されるという証左もない」とする等、一蹴している。
現在の市場においては、称呼のみで取引することは極めて少ないというのが、直近の審決でのスタンスであったが、本審決では全く逆のスタンスとなっている。
このような審決があると、審決の安定性に欠けるものになるのではないだろうか。