◆対象商標:
「O・MO・TE・NA・SHI・JAPAN」 (図案化、詳細は公報参照)
第29類
第30類
◆種別と審判番号:
拒絶査定不服の審決
不服2015-1139
◆審決日:
2016/05/31
◆関連条文:
商標法第3条第1項第6号
本件審判の請求は、成り立たない。
◆理由:
(1)商標法第3条第1項第6号の該当性について
本願商標の「O・MO・TE・NA・SHI」部分は、「客に対する扱い。待遇。客に出す御馳走。接待。人や物事に対する振る舞い方。態度。」の意味を有する「もてなし」の語に、丁寧の意を表す接頭語である「お」を冠したものである。
例えば、相手に対する気遣いとして、「おもてなしの心」、「おもてなしの精神」、「おもてなしサービス」のように使用されている。
これに続く「JAPAN」部分は、「日本」を意味する英語として親しまれたものであるから、本願商標の構成全体からは、「お・も・て・な・し・日本」の語が容易に理解、認識される。
ところで、各種商品の宣伝広告において、平仮名や漢字からなる日本の言葉などをローマ字で表記することは、本願の指定商品の分野も含め広く一般に行われている。
本願商標と同様に「おもてなし」の語と日本を意味する語とを結合した「おもてなしジャパン」又は「おもてなしニッポン」等の文字が、「日本のおもてなし」や「日本流のきめ細やかなおもてなし」程の意味合いで使用されている実情がある。
さらに、「おもてなし」又は「OMOTENASHI」等の文字が、本願の指定商品に関連する食品業界において、商品の宣伝広告に使用されている実情も認められる。
さらに、2013年9月に開かれた2020年東京五輪招致活動の最終プレゼンテーションにおいて、日本社会に根付く歓待の精神を表す「おもてなし」の語が「お・も・て・な・し」と一音一音丁寧に発音して紹介されたことが大きく注目され、本願の指定商品の主たる需要者である一般消費者にも広く認識されるに至っている。
そうすると、本願商標は、これに接する取引者、需要者に、単に日本の歓待の意を表したものと理解され、その指定商品の宣伝広告を表示したものと認識されるにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を有するところがないものと判断するのが相当である。
したがって、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標であるから、商標法第3条第1項第6号に該当する。
◆コメント
請求人は、 「本願商標はその構成全体をもってまとまりのよい造語」である旨主張していた。
本審決では、これに接する取引者、需要者は、日本の歓待の意を表したものであること、すなわち、商品の宣伝広告を表示したものと認識するにとどまるとの判断をした。
東京オリンピック招致活動で使用されて流行語にもなった語を含んでいることものあり、構成全体をもって造語という主張は難しかったであろう。
また、本審決は同一の使用例はなかったが、同じ意味の使用例があるということで商標法第3条第1項第6号に該当すると判断された事案である。
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