◆対象商標:
「バランスペット」
第28類「フィットネス用バランスボールの装飾用動物型カバー」
◆種別と審判番号:
異議の決定
異議2017-900039
◆審決日:
2017/07/28
◆関連条文:
商標法第4条第1項第7号
<本商標が上記条文に該当するか結果と理由をみる>
◆結論:
登録第5894762号商標の商標登録を取り消す。
◆理由:
1 申立人の主張及びその提出に係る証拠によれば、以下の事実がある。
(1)申立人について
ア 申立人は、「玩具の企画・設計・制作・販売及び輸出入」の業務等を目的とする法人である。
イ 「ばらんすぺっと」のウェブサイトにおいて、「ばらんすぺっと」等と表示した申立人の商品「動物の形をしたバランスボールカバー」は、2016年2月23日に、テレビ東京の番組「WBS:ワールドビジネスサテライト」の一コーナーである「トレたま」にて紹介等された。
ウ 申立人は、「ばらんすぺっと」という名称の、バランスボールに被せて用いる動物の形をしたバランスボールカバーを、2016年(平成28年)4月28日より出荷を開始した。
エ 「Yahoo!ショッピング」のウェブサイトにおいて、「ばらんすぺっとのお店 Balance Pets Shop」の表示の下、商品「バランスボールカバー ばらんすペン(ペンギン)」の販売に関する情報が掲載され、会社名等が掲載された。
(2)本件商標権者について
ア 本件商標権者が申立人に宛てた平成29年1月15日付けの書面には、「御社の商品のバランスペットの商標登録を取得した」、「私の取得した御社の商品のバランスペットの商標を買い取って欲しい」、「1月31日まで返事を待っている」旨が記載されている。
イ 独立行政法人工業所有権情報・研修館に係る「商標出願・登録情報」によれば、「出願人」を本件商標権者名とする商標登録出願は38件表示されている。
そして、当該情報において、例えば、(ア)商願2015-112987の商標「風さやか」(第30類 米等、出願日:平成27年11月4日)は、長野県農業試験場が開発し、平成25年3月に品種登録がされたばかりの新しいお米の品種名であり、(イ)商願2016-30031の商標「ルーレット式おみくじ器」(第7類 自動販売機(ルーレット式おみくじ器百円を入れるとおみくじが出てきてルーレットで星座うらないが出来る)、出願日:平成28年3月7日)は、有限会社北多摩製作所が発売中の商品の名称であり、平成28年2月26日にテレビ東京の番組「たけしのニッポンのミカタ!」で紹介されたものである。
ほか、本件商標権者は、他人の業務に係る商標につき、その商標を使用する商品及び役務を指定商品及び指定役務として、多数商標登録出願している。
2 商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)商標法第4条第1項第7号の意義について
商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は、商標登録を受けることができないと規定する。ここでいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれかおる商標」には、
ア その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、
イ 当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、
ウ 他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、
エ 特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、
オ 当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである(知財高裁平成17年(行ケ)第10349号、同18年9月20日判決)。
(2)本件商標と申立人が使用する商標等について
本件商標は、「バランスペット」の片仮名を標準文字で表してなり、その指定商品を第28類「フィットネス用バランスボールの装飾用動物型カバー」とするものである。
他方、申立人が、商品「動物の形をしたバランスボールカバー」に使用する標章は、「ばらんすぺっと」(以下「引用商標」という。)の平仮名である。
本件商標と引用商標とは、類似するものと認められ、また本件商標の指定商品と引用商標を使用する商品は、同一の商品と認められる。
(3)本件商標権者による本件商標の登録出願等の経緯について
本件商標権者は、引用商標を表示した申立人使用商品が、2016年2月23日にテレビ東京の番組「ワールドビジネスサテライト」の一コーナーである「トレンドたまご」にて紹介された2日後である同年2月25日に、引用商標とつづりを同一にする本件商標を、申立人使用商品と同一といい得る商品を指定商品として登録出願したこと、本件商標権が同年11月11日に設定登録され、同年12月13日に商標掲載公報が発行された1月後である同29年1月15日に、申立人に対し、申立人使用商品及び引用商標を明記した上で、本件商標権の買い取りを求める書面を送付したことが認められる。
これらの事実を総合すれば、本件商標権者は、テレビ番組において紹介された申立人使用商品について、引用商標が登録されていないことを奇貨として、専ら申立人に買い取らせることを目的として本件商標をその指定商品について商標登録出願し、登録を得たと認められる。
しかも、本件商標権者は、テレビ番組等において紹介された他人の業務に係る商標につき、その商標を使用する商品及び役務について登録されていないことを奇貨とした商標登録出願を繰り返しているといえる。
(4)まとめ
これより、本件商標権者は、申立人使用商品について、引用商標が登録されていないことを奇貨として、専ら申立人に買い取らせることを目的として、引用商標と類似する本件商標を、その指定商品について商標登録出願し、登録を得たと認められるから、本件商標権者による本件指定商品についての本件商標の登録出願は、その登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあり、商標法の予定する秩序に反するものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
◆コメント
商標法第4条第1項第7号の解釈で「当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合」に該当する事案であった。
近年、話題になっている大量出願をしている出願人の審査にもこの事案が適用されるのではないかと考える。
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