◆対象商標:
「ONE MORE THING」 第9類 第14類
◆種別と審判番号:
異議の決定
異議2016-685011
◆確定日:
2017/04/26
◆関連条文:
商標法3条1項柱書
商標法4条1項7号
商標法4条1項10号
商標法4条1項15号
商標法4条1項19号
◆使用標章:
「ONE MORE THING」
国際登録第1261461号商標の商標登録を維持する。
◆理由:
1 引用商標の周知著名性
申立人は、引用商標「ONE MORE THING」に蓄積した業務上の信用、新製品への高い期待、出所表示力、顧客吸引力は、申立人に極めて強く結びついており、引用商標が申立人の商標として周知著名である旨主張する。
しかし、「One more thing…」の言葉は、通常の会話において使用され得るものであり、申立人が提出する証拠も、インターネットから得られたニュースやブログ等の情報であって、新商品の発表会において故スティーブ・ジョブズがプレゼンテーション中に発する言葉として使用していたことを挙げているのみであり、そのことにより申立人又は申立人が使用する商品についての商標として使用していることと関連付けるような証拠は提出されていない。
よって、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されているとまでは認めることはできない。
2 本件商標と引用商標との類似性
①引用標章
称呼:「ワンモアシング」
観念:「もう一つのもの」
②本件商標
称呼:「ワンモアシング」
観念:「もう一つのもの」
③両者の類似性
両商標は類似の商標である。
3 商標法4条1項10号
引用商標は需要者の間に広く認識されているとまでは認められない。
よって、商標法4条1項10号には該当しない。
4 商標法第4条1項15号
引用商標は需要者の間に広く認識されているとまでは認められない。
よって、出所について混同を生じるおそれはない。
5 商標法第4条1項19号
引用商標は需要者の間に広く認識されているとまでは認められない。
よって、商標法4条1項19号に該当しない。
6 商標法4条1項7号
申立人は、商標権者は、申立人が引用商標を使用していることを知りながら、申立人が引用商標について商標登録を取得していないことを奇貨として、申立人の業務を妨害ないし阻止するという不正の目的をもって、引用商標を剽窃して登録出願したものであり、その行為は、著しく社会的相当性を欠き、商標法の予定する秩序に反するものである旨述べている。
また、申立人は、商標権者と申立人とが競合関係にあること、商標権者から申立人に対して攻撃的な発言があったこと、等を指摘しているが、これらが直ちに申立人の業務を妨害ないし阻止するという不正の目的によるものともいえない。
よって、商標権者が不正の利益を得るために使用する目的で本件商標を登録出願し、商標登録を受けたものということはできず、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標といえないから、商標法4条1項7号に該当しない。
7 商標法3条1項柱書
商標法第3条第1項柱書の「自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標」として登録を受けられる商標は、現に使用している商標だけでなく、使用する意思があり、かつ、近い将来において使用する予定のある商標も含まれるものと解すべきであるところ、申立人のいう商標権者が申立人の業務を妨害ないし阻止することのみを目的として引用商標を剽窃して登録出願したものであると直ちにいうことができないことは、上記6のとおりであり、また、現に、主として腕時計の製造・販売を業とする商標権者が、該商品及びそれと何ら関係のないものともいえない商品について、本件商標に係る登録出願をして登録を得ているのであるから、上記主張及びそれに係る証拠のみによっては、近い将来において、商標権者が本件商標をその指定商品について使用する意思がないことまでを具体的に裏付けるものとは認められない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないということができない。
◆その他:
申立人は、アップル インコーポレイテッド
権利者は、SWATCH AG である。
◆コメント:
「ONE MORE THING」は故スティーブ・ジョブズ氏の決まり文句であり、IT業界のみならず多くの人が知っているフレーズと筆者は考える。
上記関連記事にも記載したとおり、周知著名性がないとした判断には甚だ疑問が残る。