◆対象商標:
「NITTA」(ややデザイン化、詳細は公報参照)
◆指定商品役務
第7類「動力伝導用ベルト,運搬用ベルト」
◆種別と審判番号:
拒絶査定不服の審決
不服2014-25519
◆審決日:
2015/10/27
◆関連条文:
商標法第3条第1項第4号
商標法第3条第2項
原査定を取り消す。 本願商標は、登録すべきものとする。
◆理由:
(1)商標法第3条第1項第4号該当性について
本願商標は、氏の一つと認められる「新田」に通じる「NITTA」の欧文字を表示してなるものである。
そして、「新田」の文字は、我が国においては、氏を表す語として一般に用いられているものとみるのが相当であり、また、一般の商取引においては、氏は必ずしも漢字だけで表すものではなく、ローマ字で表す場合も決して少なくない。
そうすると、本願商標に接する取引者、需要者は、これをありふれた氏である「新田」をローマ字で表したもの、すなわち、ありふれた氏を普通に用いられる方法で表示したものと理解し、認識するにすぎないといわざるを得ない。
よって、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当する。
(2)商標法第3条第2項について
出願人(請求人)提出の証拠から、出願人は、1945年から「新田」ないし「ニッタ」をその社名に使用し、また、遅くとも1993年から現在まで約22年間継続して、「動力伝導用ベルト,運搬用ベルト」について、本願商標と同一である使用商標を使用したものであり、定期的に作成された使用商標を付した商品カタログを全国の事業所を通じて配布したことが推認される。
また、出願人は、継続して上記商品の宣伝広告を行い、2007年ないし2014年の間に全国から商品の発注を受けて、販売したことが認められ、加えて、書籍、経済新聞及び業界新聞の記述から、工業用ベルトを取り扱う業界において、パイオニア的存在であり、主要メーカーの1社として取引者、需要者に認識されていることがうかがえる。
さらに、出願人以外の者が「NITTA」の文字を本願の指定商品について使用している事実は発見できなかった。
これより、本願商標は、その指定商品「動力伝導用ベルト,運搬用ベルト」について、出願人により使用をされた結果、需要者が出願人の業務に係る商品であることを認識するに至ったものと判断するのが相当である。
よって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備している。
(3)むすび
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当するものの、同法第3条第2項の規定により商標登録を受けることができるものである。
◆コメント:
商標審査基準において「ありふれた氏」について以下の記載がある。
1.「ありふれた氏又は名称」とは、原則として、同種のものが多数存在するものをいうが、例えば、「50音別電話帳(日本電信電話株式会社発行)」等においてかなりの数を発見することができるものをいう。
しかし、「多数」の語の定義がなく、判断に迷う場合も多い。
明確な定義をして公表して欲しいところである。