◆対象商標:
「リッツマルシェ」
◆指定商品役務:
第35類「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」
◆種別と審判番号:
無効の審決
無効2016-890033
◆審決日:
2016/11/29
◆関連条文:
商標法第4条第1項第11号
◆引用商標
1 登録第2083248号商標 「HOTEL RITZ\PARIS」(図形商標、詳細は公報参照)
2 登録第2466347号商標 「RITZ」
3 登録第3272792号商標 「HOTEL RITZ\PARIS」(図形商標、詳細は公報参照)
4 登録第3303925号商標 「HOTEL RITZ\PARIS」(図形商標、詳細は公報参照)
5 登録第4101119号商標 「CESAR RITZ\セザール リッツ」
6 登録第4101120号商標 「CESAR RITZ\セザール リッツ」
7 登録第4101121号商標 「CESAR RITZ\セザール リッツ」
8 登録第5333237号商標 「RITZ ESCOFFIER」
9 国際登録第962563号商標 「RITZ DIAMOND」
10 国際登録第986439号商標 「RITZ ESCOFFIER」
<本商標が上記条文に該当するか結果と理由をみる>
◆結論:
登録第5594878号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
◆理由:
1 本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標中の「マルシェ」は、「市場。市。見本市。マーケット。」などの意味を有するフランス語を語源とする外来語であって、本件商標の指定役務である「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」や雑貨などの商品の小売業等に係る分野においては、商品の生産者などが直売等を行う市場(商品の売買を行う場所)を表すものとして「マルシェ」、「○○マルシェ」あるいは「マルシェ○○」などのように「マルシェ」の語が広く使用されている実情が認められる。
そうとすると、本件商標の「マルシェ」は、本件商標の指定役務を取り扱う取引者、需要者においては、「市場(商品の売買を行う場所)」ほどの意味合いを理解、認識するというのが自然であるから、この「マルシェ」の文字部分は、自他役務の識別標識としての機能を果たさないか、又は、極めて弱いものといわざるを得ないものである。
一方、本件商標の「リッツ」は、本件商標の指定役務に係る分野との関係では、我が国において一般になじみがある語とはいい難いことから、特定の意味合いを有しない一種の造語であると看取されるものである。
そうすると、本件商標は、その構成中「リッツ」の文字部分が、取引者、需要者に対し、役務の出所を識別する標識として強く支配的な印象を与えるものというべきであるから、本件商標は、その構成中の「リッツ」の文字部分を要部として抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標の類否を判断することができるものである。
以上のことから、本件商標は、構成全体より生じる「リッツマルシェ」の称呼のほか、要部である「リッツ」の文字部分から「リッツ」の称呼が生じ、また、特定の観念は生じないものであると認められる。
(2)引用商標について
ア 引用商標1、3及び4
引用各商標は、その構成中、要部である「RITZ」の文字部分から「リッツ」の称呼が生じ、特定の観念は生じないものであると認められる。
イ 引用商標2
引用商標2は、「RITZ」の欧文字を普通に用いられる書体で横書きしてなるものであり、「リッツ」の称呼を生じ、特定の観念は生じない。
(3)本件商標と引用商標1ないし4との類否について
本件商標の要部である「リッツ」の片仮名部分と引用各商標の要部である「RITZ」の欧文字部分及び引用商標2の構成文字である「RITZ」とを対比するに、称呼については、「リッツ」の称呼を共通にし、観念については、特定の観念を生じないものであることから、観念において比較できないものである。
また、外観については、両商標は、それぞれ欧文字又は片仮名からなるものであることから、外観上相違するものであるが、我が国の商取引において、欧文字からなる商標を片仮名で表記して取り扱われることがしばしば行われている実情がある。
そうすると、本件商標と引用商標1ないし4とは、観念上比較できないとしても、「リッツ」の称呼を共通にするものであって、上述の本件商標の指定役務及び引用商標1ないし4の指定商品に係る取引の実情を踏まえると、その称呼の共通性を凌駕するほどの特徴的な外観上の相違はないというべきであるから、これらを総合勘案すれば、両商標は、互いに相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
(4)小活
これより、本件商標は、引用商標1ないし4と類似する商標である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
◆コメント:
本審決のポイントは、本願商標「リッツマルシェ」の要部が「リッツ」と認められた点であろう。
しかし、本願商標を構成する「マルシェ」の語は、飲食料品の分野において、識別機能が弱いと言えるのであろうか。
「マルシェ」という語に聞き覚えのある人でも、その意味を「市場」と認識している人はどの程度いるのであろうか。
非常に疑問が残る審決であった。
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