◆対象商標:
「night ageha」(図案化、詳細は公報参照)
◆指定商品役務:
第35類「インターネットにおけるウェブサイト上の広告用スペースの提供及びそれに関する情報の提供」
第43類「酒類を主とする飲食物の提供に関する情報の提供」
◆種別と異議申立番号:
異議の決定
異議2017-900262
◆異議決定日:
2018/01/17
◆関連条文:
商標法第4条第1項第10号
商標法第4条第1項第15号
商標法第4条第1項第11号
◆引用商標
(1)申立人が雑誌「小悪魔ageha」の商標として広く認識されている商標であると主張している商標(詳細は公報参照)
(2)登録第5818273号商標 「小悪魔ageha」
(3)登録第5647339号商標 「小悪魔ageha」
<本商標が上記条文に該当するか結果と理由をみる>
◆結論:
登録第5953339号商標の商標登録を維持する。
◆理由:
(1)商標法第4条第1項第10号及び同第15号該当性について
申立人が、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当するとして引用している商標は、引用商標1である。
ア) 引用商標1及び本件雑誌の著名性
申立人の提出した証拠をもって、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標1が、申立人又は同人から使用許諾を受けた者の業務に係る本件雑誌を表すものとして、需要者間に広く知られていたと認めることはできない。
イ) 本件商標と引用商標1の類似性
両商標は、その要部において、ほぼ同一の態様からなる「ageha」の文字を共通にすることから、外観において近似し、同一の「アゲハ」の称呼及び「アゲハチョウ(揚羽蝶)」の観念を生ずるものであって、類似の商標であると認められる。
ウ) 本件商標の指定役務と本件雑誌の関連性
本件商標の指定役務は、「インターネットにおけるウェブサイト上の広告用スペースの提供及びそれに関する情報の提供,酒類を主とする飲食物の提供に関する情報の提供,酒類を主とする飲食店の人気ランキングに関する情報の提供,飲食物の提供,飲食店の予約の取次ぎ」である一方、引用商標1が使用されているのは、印刷物としての本件雑誌であるから、両者は、共通する場所で提供又は販売される関係にはなく、同じ業者によって取り扱われる実情等も見いだせないことからすれば、類似する役務と商品という関係にもなく、その関連性は低いものとみるべきである。
エ) 出所の誤認混同について
上記アのとおり、引用商標1は、申立人又は同人から使用許諾を受けた者の業務に係る本件雑誌を表すものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
また、上記イのとおり、本件商標と引用商標1は、類似の商標であるとしても、上記ウのとおり、本件商標の指定役務と引用商標1が表示されている本件雑誌との関連性は低いものである。
してみれば、本件商標をその指定役務について使用しても、これに接する取引者、需要者が、引用商標1を想起ないし連想することはなく、該役務が申立人又は同人と業務上何らかの関係を有する者の取扱いに係る役務であるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
オ) 小括
これより、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
申立人が、商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用している商標は、引用商標2及び引用商標3である。
ア) 本件商標について
称呼:
構成全体より「ナイトアゲハ」の称呼を生ずるほか、「ageha」の文字部分に相応して、「アゲハ」の称呼をも生ずる。
観念:
構成全体からは特定の観念は生じないものの、「ageha」の文字部分からは、容易に「アゲハチョウ(揚羽蝶)」の意味合いを想起させるから、「アゲハチョウ(揚羽蝶)」の観念を生ずるものと認められる。
イ) 引用商標2及び引用商標3について
称呼:
「コアクマアゲハ」
観念:
特定の観念を生じない。
ウ) 本件商標と引用商標2及び引用商標3との類否について
外観:
相紛れるおそれはない。
称呼:
本件商標から生じる「ナイトアゲハ」の称呼と引用商標2及び引用商標3から生じる「コアクマアゲハ」の称呼を比較すると、語頭における「ナイト」の音と「コアクマ」の音において差異を有するものであり、該差異音が両称呼全体に与える影響は小さいものとはいえず、本件商標から生じる「アゲハ」の称呼との比較においては、「コアクマ」の音の有無という差異を有するものであって、それぞれを一連に称呼するときは、明瞭に聴別できる。
観念:
観念において、類似するものではない。
そうすると、本件商標と引用商標2及び引用商標3は、相紛れるおそれのない非類似の商標である。
エ) 小括
これより、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
◆コメント:
意外な判断であると感じた。
引用商標1と本件商標の「ageha」のロゴ部分は、ほぼ同じものであり、出所の混同を生じるのではと初見では考えた。
しかし、審決を読み込んでいくと、申立人が引用商標1の周知著名性を証明する際の証拠の多くが要証期間外のものであった。
要証期間内の証拠を提出することが出来、かつ指定役務の関連性について言及できれば、結果は逆のものになったのではないかと筆者は考える。
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