◆対象商標:
「DRY&COOL」
◆指定商品役務:
第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,運動用特殊衣服」
◆種別と審判番号:
拒絶査定不服の審決
不服2014-19048
◆審決日:
2015/11/18
◆関連条文:
商標法第3条第1項第3号
商標法第4条第1項第16号
本件審判の請求は、成り立たない。
◆理由:
1 商標法第3条第1項第3号の意義
商標法第3条第1項第3号所定の商標が登録要件を欠くとされているのは、
(1)商品の「産地、販売地、品質」等又は役務の「提供の場所、質、提供の用に供する物」等を「普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる」商標は、商品又は役務の特性を表示記述する標章であることから、取引者、需要者によって、専ら当該商品又は役務の性質を説明するものとして認識されるのが通常であり、自他商品又は役務の識別標識として認識されるとは考え難いこと、
(2)そのような標章は、多くの場合、当該商品又は役務に係る取引一般において、取引の内容を説明するために必要かつ適切な表示として機能するものであるから、誰もが自由に使用できるようにしておく必要があり、特定人の独占的使用を認めると、円滑な取引を阻害するなど公益上の問題が生じるおそれがあること
によるものと解される(最高裁昭和54年4月10日第三小法廷判決・集民126号507頁参照)。
2 本願商標について
(1)本願商標の構成等
本願商標は、前記第1のとおり、「DRY&COOL」の文字を標準文字で表してなるものであり、「DRY」の文字と「COOL」の文字とを「&」(アンパーサンド)の記号で結合した構成からなることは明らかである。
そして、原審説示のとおり、「DRY」及び「COOL」は、それぞれ、「乾いた、乾燥した」及び「涼しい、さわやかな」の意味を有する平易な英語であって、これらを原語とする外来語の「ドライ」及び「クール」も親しまれた日常語であるといえる。
また、「&」の記号は、「そして」や「…と…」といった意味合いで複数の事柄を同格で並べる際に使用される接続記号であることも一般に広く知られているものである。
そうすると、「DRY&COOL」からは、「乾燥して、そして、涼しい」や「『乾いているさま』と『涼しく、さわやかなさま』」といった程度の意味合いを容易に認識し得るものといえる。
(2)認定事実
「吸水・吸湿性に優れ、乾きが早く、かつ、涼しい感じや、ひんやりした感じが得られる(素材を使った)商品」に対しては、「DRY」と「COOL」とを「&」で連結して、「DRY&COOL」や「COOL&DRY」などのように表記していることが認められる。
3 本願商標の商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性
(1)商標法第3条第1項第3号該当性
前記2(1)のとおり、本願商標「DRY&COOL」からは、「乾燥して、そして、涼しい」や「『乾いているさま』と『涼しく、さわやかなさま』」といった程度の意味合いを容易に認識し得るところ、前記2(2)で認定した事実によれば、「DRY&COOL」は、「吸水・吸湿性に優れ、乾きが早く、かつ、涼しい感じや、ひんやりした感じが得られる(素材を使った)商品」を表す言葉として、本願商標の指定商品中「被服、運動用特殊衣服」の取引者、需要者によって一般に認識されるものであることが認められる。
したがって、本願商標は、その指定商品中「被服、運動用特殊衣服」に使用されたときは、「吸水・吸湿性に優れ、乾きが早く、かつ、涼しい感じや、ひんやりした感じが得られる(素材を使った)商品」といった商品の品質を表示するものとして、取引者、需要者によって一般に認識されるものであって、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないと判断されるものであり、自他商品の識別力を欠くものというべきである。
そして、本願商標は、前記1のとおり、「DRY&COOL」の文字を標準文字により表してなるから、普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものである。
よって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第16号該当性
本願商標は、前記(1)のとおり、その指定商品中「被服、運動用特殊衣服」との関係では、その取引者、需要者に、「吸水・吸湿性に優れ、乾きが早く、かつ、涼しい感じや、ひんやりした感じが得られる(素材を使った)商品」といった商品の品質を表示するものと認識されるものである以上、そのような商品以外の指定商品「被服、運動用特殊衣服」に本願商標を使用した場合には、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるというべきである。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第16号にも該当する。
(3)請求人の主張について
請求人は、本願商標の「DRY」及び「COOL」の文字からは、原査定が認定した意味合いのほか、それぞれ、「そっけない、飾らない(ドライな)」及び「かっこいい、冷静な(クールな)」などの意味合いも生じるものであるから、本願商標から「乾燥して、そして、涼しい」との意味合いが一義的に認識されることを前提にした原査定の認定は、その前提において誤りがある旨主張する。
しかしながら、前述した商標法第3条第1項第3号の意義に鑑みると、同号は、本願商標の指定商品の品質及び内容の記述に係る意味合いが一義的に看取される商標にのみ適用されるものではなく、同記述に係る意味合いが複数看取される商標や、同記述に係るもの以外の意味合いをも生じ得る商標にも適用されるものと解するのが相当である(知財高裁平成26年(行ケ)第10193号同27年1月29日判決参照)。
前記(1)のとおり、本願商標は、その指定商品中「被服、運動用特殊衣服」に係る取引の実情において、「吸水・吸湿性に優れ、乾きが早く、かつ、涼しい感じや、ひんやりした感じが得られる(素材を使った)商品」といった商品の品質を表示するものとして、取引者、需要者によって一般に認識されるものであることが認められる以上、たとえ、「DRY」及び「COOL」の文字から、それぞれ、「そっけない、飾らない(ドライな)」及び「かっこいい、冷静な(クールな)」などの意味合いも生じるとしても、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないと判断されるものであり、自他商品の識別力を欠くものというべきである。
したがって、請求人の上記主張は、採用できない。
◆コメント:
妥当な審決であったと考える。