◆対象商標:
「せとうち電力」
◆指定商品役務
第39類「電気の供給」
◆種別と審判番号:
拒絶査定不服の審決
不服2017-10921
◆審決日:
2018/01/24
◆関連条文:
商標法第4条第1項第11号
◆引用商標:
登録第5915042号商標 「瀬戸内電力」
本件審判の請求は、成り立たない。
◆理由:
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本願商標について
本願商標の「せとうち」の文字は、「瀬戸内海およびその沿岸地方」の意味を有する「瀬戸内」の漢字を平仮名で表したものである。
また、本願の指定役務である「電気の供給」に関する役務を提供する電気事業者が、例えば、「東京電力」、「関西電力」、「中部電力」、「東北電力」などのように、地域や地方の名称と「電力」の文字を結合して会社の商号の略称として使用している実情がある。
よって、
称呼:
「セトウチデンリョク」
観念:
「瀬戸内地方にある電力を供給する会社」(商号の略称)
となる。
イ 引用商標について
称呼:
「セトウチデンリョク」
観念:
「瀬戸内地方にある電力を供給する会社」(商号の略称)
ウ 本願商標と引用商標との類否について
外観:
全体の構成において差異を有する。
称呼:
同一である。
観念:
同一である。
これより、本願商標と引用商標とは、外観において相違するとしても、称呼及び観念を同一にするものであるから、これらを総合的に勘案すれば、両商標は、類似の商標というべきである。
エ 小括
よって、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)請求人の主張について
請求人は、「本願商標の指定役務である電気の供給にあたっては、必ず、請求人である『せとうち電力株式会社』あるいは引用商標を有する『香川電力株式会社』という供給元が明示され、需要家にとって両社を混同することはありえない。また、単に明示されるだけでなく、口頭での説明、書面の交付により重ねて電気の供給元を説明することで、需要家が供給元の小売電気事業者(=供給元)を混同がないように小売電気事業者に義務付けを行っている。このような電気の供給にかかる取引に際しての実情を踏まえると、需要家は、『せとうち電力』は、『せとうち電力株式会社』の役務の標識である『せとうち電力』と認識し、『瀬戸内電力』は、『香川電力株式会社』の役務の標識である『瀬戸内電力』と認識するため、両者を誤認混同することは想定できない。」旨を主張している。
しかし、請求人の提出した証拠から、小売電気事業者等は、契約等を行う際にその名称などを明示する義務があり、電気の供給元である「せとうち電力株式会社」、「香川電力株式会社」の明示により、需要者が供給元を混同しないといい得ても、そのことから直ちに本願商標と引用商標とが、それぞれ単独で同一又は類似の役務に使用された場合においてまで、役務の出所について誤認混同を生ずるおそれがないとみることはできない。
よって、請求人の上記主張は、採用することはできない。
◆コメント
本事案を整理すると、
・本願商標「せとうち電力」
・本願商標の出願人(=本審判の請求人)「せとうち電力株式会社」
・引用商標「瀬戸内電力」
・引用商標の権利者「香川電力株式会社」
である。
請求人は、上記(2)のとおり使用実態から誤認混同をすることはないと主張している。
しかし、商標審査基準にも
「判断にあたっては指定商品又は指定役務における一般的・恒常的な取引の実情を考慮するが、当該商標が現在使用されている商品又は役務についてのみの特殊的・限定的な取引の実情は考慮しないものとする。」
とあり、請求人の主張は「特殊的・限定的な取引の実情」にあたるものと判断したのであろう。