◆対象商標:
「Advance Midwifed アドバンス助産師」
◆指定商品役務:
第35類「市場調査又は分析,助産師のあっせん,助産師のための求人情報の提供」
第41類「セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,書籍の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供」
第44類「助産,医業,医療情報の提供,健康診断,調剤,栄養の指導,介護,医療看護その他の医業」
◆種別と審判番号:
拒絶査定不服の審決
不服2016-1536
◆審決日:
2018/02/14
◆関連条文:
商標法第4条第1項第7号
◆理由:
(1)本願商標について
本願商標の構成中の「Advance」の欧文字は、「上級の」を、「Midwife」の欧文字は、「助産師」を、それぞれ意味する英語であるから、構成中前半の「Advance Midwifed」からは、「上級の助産師」の意味合いが理解されるものである。
また、「アドバンス」は、「上級の」を意味するものとして我が国において馴染みのある、比較的平易な外来語であることから、本願商標の構成中後半の「アドバンス助産師」の文字からも、「上級の助産師」の意味合いが理解されるものである。
そうすると、本願商標全体としても、「上級の助産師」の意味合いが理解される。
(2)出願人について
出願人は、「助産教育及び助産実践の第三者評価実施事業」等の事業を行っている。
(3)「アドバンス助産師認証制度」について
助産関連5団体は、助産師が継続的に自己啓発を行い、専門的能力を高めることにより、妊産じょく婦・新生児に対し、安全で安心な助産ケアを提供できること、社会や組織が助産実践能力を客観視できることを目的として、公益社団法人日本看護協会が開発した「助産実践能力習熟段階(クリニカルラダー)」のレベルIIIに到達している助産師を、「アドバンス助産師」として認証する制度の創設を進め、その認証は、出願人が行い、2015年(平成27年)8月1日より、上記のレベルIII認証申請の受付(WEB受付)を出願人が開始した。
(4)「アドバンス助産師」について
出願人は、平成27年度に5、562人、平成28年度に5、440人の計1万1、002人の助産師を「アドバンス助産師」として認証しており、これは、就業者に占める割合が32.4%であり、約3人に1人の助産師が「アドバンス助産師」の認証を受けているという現状にある。
(5)商標法第4条第1項第7号該当性について
上記によれば、「アドバンス助産師認証制度」は、専門職大学院のうち助産分野の評価を行う認証評価機関として文部科学大臣の認証を受け、「助産教育及び助産実践の第三者評価実施事業」等を行う出願人が、「アドバンス助産師」の認証を行う制度である。
そして、その認証制度は、公益社団法人日本看護協会が開発した専門的知見を取り入れた指標を用いたものであることからすると、助産師の能力を適切に評価しうる認証制度であるということができるものであって、同認証制度は、一定程度の高い助産実践能力を有する助産師を、適切に認証する制度として、医療関連分野や一般の需要者においても知られているといえるものである。
そうすると、「アドバンス助産師」は、国家資格である助産師のうち、一定程度の高い助産実践能力を有する者を意味するものとして、我が国において相当程度知られているものというのが相当である。
してみれば、「アドバンス助産師」の認証を行う機関である出願人が、「Advance Midwifed アドバンス助産師」の文字からなる本願商標を、その指定役務に使用したときは、これに接する取引者、需要者は、「上級の助産師」、または「国家資格である助産師のうち、一定程度の高い助産能力を有する者」に係る役務であることを認識するものといえ、いずれにしても、「国家資格である助産師」に係る役務であると認識するものというのが相当であるから、本願商標は、国家資格等の制度や、助産師に関連する法律等の趣旨に反する商標ではなく、取引秩序を乱すおそれや、社会公共の利益に反するものでもないから、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」ということはできない。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
◆コメント:
「アドバンス助産師」は国家資格の「助産師」のうちのレベルを表すものであり、取引秩序を乱すものでも、公共の利益に反するものでもないであろう。
妥当な審決であったと考える。
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