◆対象商標:
「京都トレジャー\KYOTO TREASURE」
◆指定商品役務:
第35類「飲食料品・酒類・食肉・食用水産物・野菜及び果実・菓子及びパン・米穀類・牛乳・清涼飲料水及び果実飲料・茶・コーヒー及びココア・加工食料品の小売又は卸売りの業務において行われる顧客に対する便益の提供及びこれに関する情報の提供」
◆種別と異議申立番号:
異議の決定
異議2017-900304
◆異議決定日:
2018/02/07
◆関連条文:
商標法第4条第1項第11号
商標法第4条第1項第15号
◆引用商標:
(1)登録第468782号商標 「TREASURE」
(2)登録第524773号商標 「TREASURE」
(3)登録第530269号商標 「トレジャー」
(4)登録第531880号商標 「Treasure」(図案化、詳細は広報参照)
(5)登録第2281573号商標 「Treasure」
(6)登録第2309697号商標 「TREASURE」
(7)登録第4522781号商標 「Treasure」
(8)登録第4551484号商標 「Treasure」
<本商標が上記条文に該当するか結果と理由をみる>
◆結論:
登録第5971375号商標の商標登録を維持する。
◆理由:
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標「京都トレジャー\KYOTO TREASURE」は、同じ書体、同じ大きさで、等間隔に配置されており、外観上まとまりよく一体的に表されているものであり、また、これら構成文字より生じる「キョウトトレジャー」の称呼もよどみなく一連に称呼できる。
そして、本件商標の「京都」及び「KYOTO」の文字が、「京都府南東部に位置する市。府庁所在地。」を意味し、その構成中後半の「トレジャー」及び「TREASURE」の文字が、「宝物、財宝」等を意味する平易な英語であることから、「京都の宝物(財宝)」程の意味合いを容易に理解、認識させる。
また、本件商標は、外観上まとまりよく一体的に表されていることから、「京都」及び「KYOTO」の文字が地名を表示する語であるとしても、かかる構成においては、役務の提供地を表すものとは直ちに理解できず、殊更、それら文字部分を捨象して取引に資されるというよりは、むしろその構成全体をもって不可分一体のものと認識し把握されるとみるのが自然である。
よって、
称呼:
「キョウトトレジャー」
観念:
「京都の宝物(財宝)」
となる。
イ 引用商標
称呼:
「トレジャー」
観念:
「宝物、財宝」
ウ 本件商標と引用商標との類否
外観:
外観上、容易に区別し得るものといえる。
称呼:
両者は、「トレジャー」の音を共通にするが、語頭において「キョウト」の音の有無という顕著な差異を有するから、両称呼は明確に聴別し得る。
観念:
本件商標から生じる「京都の宝物(財宝)」程の観念と、引用商標から生じる「宝物、財宝」の観念は、互いに異なる客体を示しているものと容易に理解できるため、両商標は、観念において、互いに紛れるおそれはない。
よって、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない、非類似の商標である。
エ 小括
これより、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
申立人の主張:
申立人は、申立人使用商標が周知・著名なものであって、申立人が京都に根差した企業であることに鑑みると、本件商標は、申立人使用商標を想起させる蓋然性が高いといえ、これがその指定役務中、飲食料品を取り扱う役務について使用された場合、申立人の業務に係る役務と、出所につき混同を生じるおそれがある旨主張する。
なお、申立人使用商標とは、
「寶(宝)」,「タカラ」及び「TaKaRa」
である。
ア 申立人使用商標の周知性について
申立人の提出した証拠から、申立人使用商標は、申立人のハウスマークにも使用され、商品「焼酎、清酒、ソフトアルコール、調味料」を表示する標章として、100年以上にわたり使用、広告され、申立人による関連事業を含めた売上高も相当程度の規模に及んでいるから、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、需要者の間に広く認識されているものと認められる。
イ 申立人使用商標の独創性について
申立人使用商標は、「寶(宝)」、「タカラ」又は「TaKaRa」の文字からなるものであるところ、「宝(タカラ)」の語は、「宝物、財宝」等を意味する親しまれた語であるから、申立人使用商標が、「宝」の漢字の旧字体である「寶」の漢字、また、当該語の音を欧文字で表し、大文字と小文字を交互に使用して表されてなるとしても、高度の独創性を有するとまではいえない。
ウ 本件商標と申立人使用商標の類似性について
申立人使用商標は、「寶(宝)」、「タカラ」又は「TaKaRa」の文字からなるものであるから、その構成文字に相応して「タカラ」の称呼、「宝物、財宝」の観念を生じる。
他方、本件商標は、上段に「京都トレジャー」の文字と下段に「KYOTO TREASURE」の欧文字を上下二段に横書きしてなるところ、その構成文字に相応して、「キョウトトレジャー」の称呼を生じ、「京都の宝物(財宝)」の観念を生じる。
そうすると、本件商標と申立人使用商標とは、外観においては、構成文字に顕著な差異を有するため、容易に区別し得るもので、称呼においては、構成音に顕著な差異を有するため、明確に聴別し得るものであり、観念においても相違するから、互いに紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異のものと認められる。
エ 出所の混同について
本件商標と申立人使用商標とは、非類似の商標であって、別異のものと認められること、かつ、申立人使用商標は高度の独創性を有するとまではいえないことを考慮すれば、その出所について誤認混同を生じるおそれはないというべきである。
これより、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
◆コメント
仮に申立人使用商標が「TREASURE」であり、この申立人使用商標の周知性が認められていたら、別の結果になっていた可能性はある。しかし、実際の申立人使用商標は「寶(宝)」、「タカラ」又は「TaKaRa」であり、本件商標とは別異の商標であることから、商標法第4条第1項第15号の適用は困難であろう。
妥当な審決であったと考える。
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